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県の予算案 「自治の力」と言うなら

 長野県の2018年度の税金の使い道を示す当初予算案がきのう公表された。

 今回は阿部守一知事の2期目最後の当初予算編成になる。掲げてきた「県民起点の県政」の骨格になっているか目を凝らしたい。

 一般会計の総額は8463億円。本年度当初より162億円減る。過去10年で7番目の規模だ。

 4月開学の県立大(長野市)の建設工事が終わることや、市中金利低下により中小企業融資制度資金を大幅に減額することなどが縮小の理由だ。

 ただ、昨年度はなかった2月補正予算案を今回、当初と一体的に編成しており、それを加えると8674億円に上る。実質は増額予算と言える。

 台所事情は楽観できない。

 県内経済が好調で法人関係税の伸びを想定、県税収入は本年度当初より58億円多い2333億円を見込む。それに伴い、国税の分配である地方交付税は減らされる。

  

   <依然苦しい台所>

 高齢化の進行に伴う社会保障関係費の増加などで財源は足りない。預貯金に当たる財政調整基金を取り崩してのやりくりが続く。

 中期財政試算によると、効率的な予算執行に努めても財源不足は拡大する。本年度536億円の基金残高は5年後に2割程度になる見通しだ。

 借金に当たる県債発行は減らしてきているが、18年度で1兆5574億円の残高を抱える。県民1人が約75万円を背負う計算だ。

 将来世代の負担を減らすためにも歳出抑制に努めるべきだ。

 一方で、阿部知事は「田中(康夫)県政以降、必要な投資が行われてこなかった」と、大型の「箱物」建設を推進する。

 県立大は初期投資額が最終的に108億9千万円に上り、最初の試算を12億円近く上回っている。

 続いて20年3月の開館を目指す県立武道館(佐久市)新設、21年度開館目標の県信濃美術館(長野市)全面改築が本格化する。

 県民世論調査で賛否が拮抗(きっこう)した武道館の建設費は約50億円の試算が既に7億円余増えている。それぞれの計画がさらに膨張しないか厳しく見ていかなければならない。県民への説明責任を果たすことも大切だ。

 

   <透明性と県民参加>

 集めた税が使い切れず、中止を求める声もあった森林税は、さらに5年継続することが決まった。

 所有者や境界が不明で集約化が進まない里山整備の面積を減らし河畔林や学校林、市街地緑化などに使途を広げる。余っていた税収も使い、本年度当初より9千万円多い7億5千万円を投入する。

 税の継続の是非を検討した専門家会議から、使途が「ブラックボックス化している」と指摘されている。透明性の確保がいっそう重要になる。

 県政運営の指針となる次期総合5か年計画が18年度から始まる。

 その基本方針の一つに「自治の力みなぎる県づくり」がある。今回の予算案にも地域づくり活動の担い手育成などを盛っているが、新味に欠ける。

 自治の力と言うなら、まず県政の大本となる予算の編成に県民参加を促すことを提案したい。

 現状は12月に各部局の要求がまとまった段階で公表し、県民意見を募っている。今回寄せられたのは16件。うち14件は一つの事業に対する同趣旨の意見だった。県民の関心が高いとは言えない。

 東京都は新年度予算編成に都民の関心を集め、現場の声を生かす試みを始めた。

 子育てや高齢化対策など6分野で事業を一般公募する特別枠を設けた。その事業を絞り込む際にも都民がインターネット投票で参加。情報通信技術を使った高齢者の見守り支援など9事業に8億5千万円を盛った。

 県内でも高森町が透明性を確保する新たな取り組みを行う。

 担当者から予算要求の説明を受けながら、首長らが妥当性を判断する理事者査定を住民に公開する。今回は重点施策が対象だが、今後、全事業を公開対象にすることも検討するという。

 予算がどう編成されるのか見えるようになれば、住民の関心は高まるだろう。

 

   <AI活用に歯止めは>

 県民参加を進める上で気になるのは、政策立案への人工知能(AI)の活用だ。県は新年度、京都大、日立製作所と連携し、実証研究を始める。

 大量のデータを解析し、学習したり、判断を下したりするコンピュータープログラムのAIは、将来予測を行うのに便利な道具ではある。県はリニア中央新幹線開業が地域にもたらす経済などへの影響や人口減少対策の効果の予測といった利用を想定している。

 リニアには環境面などから反対する声が根強くある。AI活用で住民の多様な声が反映されにくくならないか。

 どこまでAIを使い、どう政策立案に生かすのか。県民への説明が必要だ。

(2月8日)

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