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徳川家康の忠臣、本多重次は勇猛な武将として名をはせた。陣中から妻に送った手紙は家族への思いが詰まる。〈一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ〉。お仙は息子で後の丸岡城主。福井県坂井市丸岡町はその城下町である

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どれほど多くの家族がその身を案じたことだろう。丸岡町を通る国道8号線が記録的な大雪でストップ。千台以上の車両が立ち往生しドライバーらが2日連続の車中泊を強いられた。隣の福井市では車が雪に埋もれ男性が一酸化炭素(CO)中毒死した

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沿道から救いの手がいくつも差し伸べられた。丸岡町にある餃子専門店は臨時休業したが41歳の副店長が近くに住む従業員に声をかけ、マーボー丼など500食を調理。手分けして約200人のドライバーに配って歩いた。パンの会社は1万個を無償提供し自衛隊員が配っている

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「困った時はお互いさま」。住民も熱いお茶や食事を差し入れた。あの時もそうだった。2014年2月の豪雪。長野県内は各地で車が立ち往生した。茅野市では住民がおむすびを握ってバスに乗っていたジャズバンドの中高生に配り、トイレも貸した

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ジャズバンドはお返しの「おむすびコンサート」を小学校で開いた。今回も雪対策に教訓を残しているが、合わせて「お互いさま」の支援も引き継ぎたい。丸岡町が〈一筆啓上〉にちなんで続ける日本一短い手紙コンクールには、沿道の人々への感謝をつづる作品が多く寄せられるはずだ。

(2月9日)

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