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五輪開幕 政治利用が影落とす

 五輪は時代を映し出してきた。そこには光も影もある。とはいえ、これほど政治が影を落とす大会は久しくなかっただろう。平昌冬季五輪が幕を開ける。

 日本選手、とりわけ県勢の活躍は楽しみだ。スピードスケートの小平奈緒選手は500メートルで一昨年から負け知らず。千メートルでも世界新記録を出した。女子では初の金メダルに期待が膨らむ。

 ノルディックスキー複合の渡部暁斗選手も直前のワールドカップ(W杯)で4連勝し、好調の波に乗る。複合個人では初となる金が手の届くところにある。

 この2人をはじめ多くの選手が、子どもの頃に見た長野五輪が原点になったと語っている。実力を余さず発揮し、さらに次の世代へバトンをつないでほしい。

 残念なのは、政治的な打算が目につくことだ。「南北融和」の演出はその最たるものだろう。

 核開発をめぐる国際包囲網の分断を狙う北朝鮮、対話に道筋をつけたい韓国、五輪の求心力低下に危機感を強める国際オリンピック委員会(IOC)―。三者三様の思惑が絡み、北朝鮮選手団の参加が開幕を目前に決まった。

 分断と対立が続く南北が五輪を機に雪解けに向かうなら歓迎すべきことである。けれども、その展望を欠いたまま、一時的に危機が覆い隠されるにすぎない。

 女子アイスホッケーで南北が合同チームを組むことは、選手らの意向を踏まえたものではない。IOCは北朝鮮の大会参加をもろ手を挙げて受け入れ、本来、出場資格がない選手を特例で認めた。スポーツの根幹に置くべき公正さを顧みない政治判断である。

 禁止薬物の使用を国家ぐるみで隠蔽(いんぺい)してきたロシアの選手団を除外した処分も政治色が濃い。国旗、国歌こそ使えないものの、実態は選手団に近い形で参加するという。閉会式までに処分が解除される可能性もささやかれる。

 競技大国のロシアを欠き、五輪の商業的な価値がそがれるのを避けたい考えが見え隠れする。五輪への信頼に関わるドーピングの根絶に向け、確たる姿勢をIOCは打ち出せていない。

 一方で、商業主義が招いた大会の肥大化は開催都市の財政負担を増大させ、深刻な「五輪離れ」につながってきた。住民の反対で招致を断念する都市は相次ぐ。

 平和、連帯、公正…。五輪憲章が掲げる理念と実態の溝は広がっている。平昌大会を、五輪は誰のため何のためにあるのかをあらためて考える機会にもしたい。

(2月9日)

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