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過労事故死 裁判所の判断を警鐘に

 長時間に及ぶ過重な労働は脳・心臓疾患での死や自殺にとどまらず、通勤、帰宅時の交通事故による死亡にも結びついている。見過ごされてきた「過労事故死」に目を向ける契機とし、過重労働の防止対策を強めたい。

 前日の昼前から22時間近く、仮眠も取らずに働いた後だったという。帰宅中に事故を起こして死亡した20代の男性の遺族が、過労が原因として勤務先に損害賠償を求めた裁判で、和解が成立した。

 横浜地裁川崎支部が遺族側の主張を認める判断を示した上で和解を促していた。帰宅途中の事故死について過重労働が原因と認定し、安全配慮義務をおろそかにした勤務先の責任に踏み込んだ司法の判断は画期的である。

 男性は商業施設への観葉植物の飾り付けなどを手がける会社に勤め、事故前1カ月の時間外労働は90時間を超えた。深夜、早朝に及ぶ不規則な勤務で疲労が蓄積し、睡眠不足が顕著だったという。バイクで電柱に衝突した事故は居眠りが原因とされる。

 会社は事故後、11時間の「勤務間インターバル」を就業規則に明記した。勤務を終えてから次の勤務まで間隔を置き、休息を確保する制度だ。和解条項には、ほかにも仮眠室の設置など再発防止策を講じることが盛り込まれた。

 通勤中のけがや死亡は労災保険の対象になるが、過労を原因とする事例があるかを厚生労働省は把握していない。今回、表に出た事故死は氷山の一角である可能性を地裁支部は指摘した。

 会社を出た後であっても、過労によって事故を起こさないよう配慮する義務が雇用主にはある―。裁判所が示した判断を各企業は警鐘と受けとめ、過重労働の防止に一層努めるべきだ。

 過労死等防止対策推進法が2014年に施行され、対策は進んではきた。けれども、過労による事故死に目は届いていない。厚労省の協議会が法の見直しを検討しているという。課題と位置づけ、しっかり議論する必要がある。

 労働法制の見直しも欠かせない。政府が今国会に提出する「働き方改革」の関連法案は、時間外労働に上限規制を設ける労基法改定が柱の一つだが、「月100時間未満」では全く不十分だ。勤務間インターバルの導入も努力義務とするにとどまる。

 過労死防止に向けた政府の対策大綱は、過重労働と関連する事案を広く調査の対象とする。事故死について実態把握を急ぎ、働く人を守る施策につなげたい。

(2月10日)

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