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先週末の通勤途中、この冬初めて小鳥のさえずりを耳にした。木のてっぺんで軽やかに歌っていたのはホオジロである。「一筆啓上つかまつりそうろう」と聞こえる美声で雌を懸命に誘っていた。寒さはまだ厳しくても、子育ての季節の春が確実に近づく

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鳥にとって春は旅の季節でもある。冬鳥は北に帰り、南からは夏鳥がやってくる。何千キロも飛ぶことがある渡り。途中でルートを外れる「迷鳥」もいる。北陸に大雪をもたらした寒気の影響か、県内に珍しい“お客”がやってきた。ヤマヒバリだ

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長野市近郊で撮影された。県内ではこれまで2回しか目撃記録がない。繁殖地はシベリアで越冬地は中国北部や朝鮮半島。シベリアに向かう途中で迷った? それとも単なる気まぐれ? 9日の本紙を見て想像を巡らせた野鳥ファンも少なくないだろう

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草原をすみかとして、繁殖期にけたたましくさえずりながら空高く舞い上がる。ヒバリは「揚げ雲雀(ひばり)」と称される生態で知られる。夏目漱石は「口で鳴くのではない。魂全体が鳴くのだ」と「草枕」に記した。小林一茶の俳句にも頻繁に登場する。日本人にとってなじみ深い鳥だ

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もっともヤマヒバリの外見はヒバリとまるで違う。分類学上も異なる科に属し、詳しい生態は図鑑にも載っていない。さえずりや飛び方にも興味はつきない。もし行き先に迷っているなら、自然豊かな信州を気に入ってとどまってほしいと願うのは愛鳥家のわがままだろうか。

(2月12日)

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