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FRB新議長 手腕が早々に問われる

 米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)の新議長に、パウエル理事が就任した。

 かじ取りが難しい時期の船出である。

 米国経済は拡大基調にある。それなのにニューヨーク株式市場は2日から2営業日連続して大幅に下がり、5日は過去最大の下落となった。その後も不安定な値動きを続けている。

 1月の米雇用統計で賃金が大幅に上昇したため、物価が上向いてFRBの利上げペースが早まる観測が広まったことがきっかけとされる。米国の長期金利が上昇し、資金が株式市場から離れた。

 波紋はアジアなど世界に広がり、一時は世界同時株安の様相になった。東証の下げ幅も一時1600円を超えた。

 NY市場や東京市場のこれまでの株高は、各国の金融緩和で生まれた大量の余剰資金に支えられてきた。割高感も広がっており、市場が一時的な調整局面に入ることは想定もされていた。

 ただし、金利上昇の傾向が続くと、好景気と低金利が共存する「適温相場」が崩れ、株価下落が長期化する可能性もある。消費者や経営者の心理を冷やし、実体経済に悪影響を与えかねない。

 イエレン前議長は景気拡大に伴い、緩やかに利上げを進めてきた。パウエル新議長も路線を継承する可能性が高いとされている。各種の経済指標を見極めて、市場と対話しながら慎重に金融政策を決めていくことが、これまで以上に必要になる。

 トランプ大統領の政策の影響も懸念される。

 トランプ氏は1月30日の一般教書演説で、公約に掲げてきたインフラ整備について、1兆5千億ドル(約162兆円)以上投資することを表明した。これまでの目標額1兆ドルから引き上げている。一方で昨年末に成立した税制改革法は、18年から10年間で総額1兆5千億ドル程度の大型減税を実施する。

 歳入が減るのに支出を増やすと国債の増発につながり、国債価格低下とさらなる金利上昇を招く。

 FRBは次回3月の会合で利上げを検討する方針を打ち出している。市場を安定させるには、どんな手段が必要なのか。調整型とされるパウエル新議長の手腕が早々に問われる。

 トランプ氏は金融緩和路線を支持しているとされる。米国の景気動向は世界経済に大きな影響を与える。政権との距離を保ち、中央銀行の役割を忠実に実行していくことが求められている。

(2月12日)

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