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メルケル政権 譲歩重ねた多難な船出

 半年近くに及んだ戦後最長の政治空白を経て、4期目のドイツ・メルケル政権がようやく発足した。

 メルケル氏が率いる保守政党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は、昨年9月の総選挙で第1党を維持したものの、得票率を大きく減らし、議席は過半数に届かなかった。政治混乱が長引き、首相の求心力は低下している。

 ドイツの温暖化対策は後退し、シリアなどからの難民受け入れでも抑制策を採らざるを得なくなっている。“環境宰相”“自由主義の最後の守護者”とも称される存在感を今後も発揮できるのか。厳しい局面を迎えている。

 3期目に連立を組んだ、中道左派の社会民主党(SPD)も、総選挙で史上最低の得票率に落ち込んだ。二大政党の退潮は、新興右派「ドイツのための選択肢(AfD)」の国政進出を許し、第3党に躍進させる結果を招いた。

 従属的な政権参加が敗因とみたSPDは連立を解消。メルケル氏は、中道政党、環境政党との連立を探ったが、3党間の溝は埋まらず決裂した。

 事態打開のため、シュタインマイヤー大統領が異例の仲介に乗り出し、最終的には、CDU・CSUとSPDが改めて連立を組むことで決着している。

 代償は大きいようだ。

 温室効果ガス削減目標の達成時期の先送り、難民の受け入れ制限に加え、メルケル氏は閣僚の配分でSPDへの大幅な譲歩を強いられた。AfDは、欧州連合政策から税制までを取り仕切る予算委員長のポストを握った。

 メルケル政権は欧州の結束を最重視する方針を掲げる。ただ、統合深化の実現も、国内政治の掌握にかかってくる。

 難民保護、脱原発、徴兵制の事実上の廃止、同性婚の容認…。メルケル氏が採用してきた左派顔負けの政策が、保守層の不満を高めたとも指摘されている。

 CDU・CSU内には既に、メルケル後をにらみ、AfDの台頭を抑えるためにも、保守的な政策に回帰しようとの動きがある。

 格差の拡大や治安悪化に対する不満が既成政党に向かい、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党が受け皿となって勢力を伸ばす。議論の積み重ねのない聞こえのいい政策が前面に出て、重要な課題は棚上げにされる。

 先進各国を覆う民主政治の揺らぎに、「欧州の盟主」はどう向き合うのか。その行方は、日本にとっても人ごとでない。

(3月19日)

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