長野県のニュース

斜面

「すまじきものは宮仕え」と武部源蔵が涙に暮れる。浄瑠璃「菅原伝授手習鑑(かがみ)」の一場面

だ。かつてのあるじで流罪となった菅原道真の子を寺子屋でかくまっている。子の首を差し出せと迫られ、別の子を身代わりにしようと決心する

   ◆

この報いはいずれ自分たちに回ってくると罪深さを嘆く妻に応じた源蔵の言葉が「すまじきものは…」だ。宮仕えとは「主家に仕えること。仕官。奉公。転じて、会社や役所に勤めること」と辞書にある。人に仕えれば、時に不本意なことも強いられる

   ◆

何の罪もない子を手にかけるほどではないにせよ、財務省の職員は今、源蔵の心境なのではないか。文書改ざんで再燃した森友問題の論戦が続く。国有地売却は適正だったと国会で繰り返した佐川宣寿前理財局長は国税庁長官を辞任し、改ざんの「最終責任者」と名指しもされた

   ◆

追及の矢面に立ち、苦しい答弁を重ねた末に責任を負わされる。宮仕えはつらい。後任の理財局長は民主党政権時に首相秘書官を務めたことから「安倍政権をおとしめるため意図的に変な答弁をしているのではないか」と自民党議員に責められてもいる

   ◆

腹に据えかねたのだろう。「公務員として、仕えた方に一生懸命仕えている」と色をなした。使命感は伝わってきた。憲法は「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と定める。証人喚問が行われる佐川氏ともども、国民に奉仕する公務員の原点に立ち返る時だ。

(3月21日)

最近の斜面