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ふるさと納税 不毛な競争に終止符を

 ふるさと納税制度が始まって10年になる。

 寄付に対するお返しを国が制限しても競争は続いている。自治体同士が事実上、税金を奪い合う制度の矛盾は明らかである。廃止に向けた議論を進めたい。

 そもそも「ふるさと納税」の名称は実態と合っていない。

 2007年、総務相だった菅義偉官房長官が制度を提唱した時は住民税の一部を故郷に納めるとの説明だった。

 実際には、「ふるさと」に限定せず全ての自治体が対象になった。「納税」ではなく寄付によって、自己負担の2千円を除いた全額が住民税と所得税から減額されている。

 自治体は寄付へのお礼に地元産品などを贈るようになった。それが2千円より高い物なら、寄付した人が得をすることになる。

 返礼品を見比べて寄付できる民間の仲介サイトが相次いで立ち上がったこともあり、高価な返礼品を用意した自治体に寄付が集まる傾向が強まる。自治体も他に負けまいと返礼品の豪華さを競うようになった。

 自分の利益とは関係ない志が本来の寄付である。ふるさと納税は寄付文化をゆがめている。

 総務省は昨年4月、寄付額の3割を超える品物や換金しやすい家電などを贈るのを自粛するよう自治体に求めた。だが、返礼品競争は収まっていない。

 自治体側から見れば、寄付を受けた額より、住民が他の自治体に寄付したことに伴う住民税の控除額が上回れば「赤字」になる。

 長野市は、特典を基準に寄付先が選ばれるのは制度の趣旨に合わないと、返礼品を設けないできた。赤字は1億円を超えた。議会などからの求めもあり昨年6月、寄付額の20〜25%、上限5千円相当に抑えて返礼品を導入した。

 それでも赤字は拡大し、「背に腹は代えられない」と今夏にも返礼品を寄付額の30%に引き上げ、上限5千円もなくす。

 自治体がまっとうな姿勢を保っていても返礼品競争に参入せざるを得なくなる現状が見て取れる。

 人気の家電を贈り続ける自治体も県内外にある。

 都市と地方の税収格差を是正するのが、ふるさと納税の目的とされる。だが、限られたパイの奪い合いでは、どこかが黒字になれば、どこかが赤字になる。

 格差は国から地方への財源移譲と自治体への分配の仕組みの工夫で是正するのが筋である。不毛な競争には終止符を打ちたい。

(3月22日)

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