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自民党 政治の信頼回復こそ急務

 自民党大会がきょう都内で開かれる。今年の運動方針案は憲法について独立した章を設けた。「憲法改正案を示し、改正実現を目指す」としている。

 政権与党として今、最優先で取り組むべき課題は何か。党総裁である安倍晋三首相の意向に従って改憲の国会発議へと突き進むことではないはずだ。

 森友学園問題が再燃し、政治への信頼を揺るがす事態になっている。財政再建、少子高齢化対策など本来、国会でなされるべき議論は深まっていない。

 首相「1強」のひずみが顕著である。政治の立て直しにこそ、力を注ぐ必要がある。



   <熟議を欠く改憲案>

 大会に向け、党は改憲条文案の取りまとめを急いできた。首相が昨年の憲法記念日に党総裁として掲げた「20年施行」を目指すためだ。年内に発議し、国民投票に進むスケジュールを描く。大会では改憲の方向性を報告する。

 9条への自衛隊明記、緊急事態条項、参院選「合区」解消、教育充実の4項目である。

 他の条文と整合するのか、国民の権利が侵害されないか…。急ごしらえの条文案には掘り下げるべき論点が数多く残されている。そもそも、なぜ改める必要があるのか、はっきりしない。改憲そのものが目的化している。

 とりわけ9条の取りまとめは強引だった。反対意見を押し切って党憲法改正推進本部の細田博之本部長に対応を一任している。細田氏は「9条の2」を新設し、自衛隊を規定する考えを示す。

 戦争放棄の1項、戦力不保持と交戦権否認の2項を維持しつつ自衛隊を書き込むという首相の提案を踏まえたものだ。結論ありきの粗い憲法論議である。



   <無責任な首相追随>

 首相に追随する党の姿勢は森友学園問題でも同様だ。野党が要求する関係者の国会招致を拒んできた。財務省理財局長として国会で答弁した佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問はようやく行われる。文書改ざんの発覚で与党も認めざるを得なくなった。

 とはいえ、全容解明には後ろ向きだ。首相の妻、昭恵氏の招致は拒否を続ける。国有地売却と切り離し、文書改ざんだけに問題を押し込めようとしている。

 本来の内容とは違う文書が国会議員に提示された。「学園の提案に応じて鑑定評価をし、価格提示を行うこととした」といった記述が削除されたり、書き換えられたりしている。国民の代表を欺く重大な背信行為である。

 ただし、改ざんは問題の一部にすぎない。

 国民の財産である国有地が大幅に値引きして払い下げられた。適正だったとしてきた政府の説明の根拠が揺らいでいる。建設予定の小学校は昭恵氏が一時、名誉校長に就いていた。政治家の働き掛けや官僚の忖度(そんたく)があったのではないか―との疑いは拭えない。

 14年に内閣人事局が発足し、中央省庁の幹部人事を官邸が決める仕組みになった。首相周辺の意向を酌んで仕事をする傾向が省庁で強まっている可能性もある。今回の国有地売却だけにとどまらない問題をはらんでいる。

 行政府の仕事ぶりをチェックすることは国会議員の重要な役割である。与党だからといって政府をかばい、問題の幕引きを急ぐようでは職責を果たせない。

 12年に首相が返り咲いてから5年余りになる。国政選挙で与党は圧勝を重ねてきた。この間、重大な問題が幾つも起きている。

 加計学園の獣医学部新設は森友同様、不透明な形で手続きが進んだ。「総理のご意向」などと記された文書を政府は当初「怪文書」と捨て置こうとした。南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報問題でも政府にとって不都合な情報の隠蔽(いんぺい)が図られた。



   <監視機能を強めよ>

 これらの問題を振り返れば、長期政権のおごり、緩みは隠しようがない。強引なやり方を許してきた与党の責任は重い。

 官邸主導が強まる中、国会の役割は重みを増している。本来ならチェック機能を強めなければならないのに自民の動きは逆だ。

 昨年から要求しだしたのは、質問時間配分の見直しである。衆院予算委員会では与野党で2対8が慣例だったのを改め、昨年の特別国会で5対9と与党の時間を増やした。今国会の18年度予算案に関する基本的質疑は3対7だ。監視機能を弱めかねない。

 反対意見の強い法案の採決強行も繰り返されてきた。形ばかりの質疑で時間を積み上げ、議論は尽くされたと押し切る。乱暴な国会運営が常態化している。

 秋には総裁選がある。総裁任期が延長され、首相の3選出馬が可能になった。当選すれば、任期は21年9月までとなる。

 国会が政府の下請け機関のような状況が続けば、国民の政治不信は高まるばかりだ。政党の存在意義が問われていることを肝に銘じるべきである。

(3月25日)

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