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有史以来の浅間山の大噴火といえば天明噴火(1783年)が有名だが、天仁噴火(1108年)は地元でもあまり知られていない。230年余り前の天明は被害絵図などの史料が数多く残るが、平安後期の天仁はほとんどないためだ

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ただ右大臣藤原宗忠の日記「中右記」の9月5日に、今の群馬県にあたる上野国司から朝廷に届いた報告文が記されている。「浅間山が7月21日に突如噴火した。猛火が峰を焼き、煙が天まで上り、国中に火山灰が降り注ぎ田畑が壊滅してしまった」と

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鎌倉幕府ができる約80年前。各地で反乱が起き、武士の時代が近づいていた。長野県側も記録があれば壊滅した村々の惨状が伝わったろう。「追分火砕流」という膨大な噴出物が流れ下り、南端は今の在来線を越えた。地元の石垣に使われるキャベツ状の火山弾が火砕流の象徴だ

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御代田町では火砕流に埋まった住居跡も見つかっている。今度、周辺自治体などが作った被害想定のハザードマップは天仁噴火を踏まえたものだ。驚いた人もおられよう。最悪の場合、火砕流や高温の暴風は新幹線を越え、役場庁舎ものみ込んでしまう

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風評被害を心配する声もあるという。観測態勢は整っている。むしろ正確な情報発信が大切だ。天仁の大噴火に気をもむなら、この列島に安住の地を求めるのは難しかろう。自然の力はあなどれないが、共存がもたらす恵みは豊かである。歴史に謙虚に学んだ“最悪シナリオ”と考えたい。

(3月25日)

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