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進む温暖化 危機感を共有し直して

 影響の大きさを改めて痛感する。

 経済損失が過去最大に上った。数千万人が飢餓状態に陥った。地球温暖化を要因とする被害の実態を、国際機関が相次いで公表している。

 2020年に始まる温暖化対策「パリ協定」には現在、離脱を表明した米国を含め、全ての国と地域が参加する。足並みがそろったように映るが、米国のほかにも国内事情を優先する国があり、先行きは楽観できない。

 異常気象や生態系激変の影響はどの国の人々にとっても無縁でない。国際協力なしには回避できない問題であることを、各国は忘れないでほしい。

 世界気象機関は、17年は米大陸を襲った大型ハリケーンなど各地で気象災害が多発し、34兆円の経済損失をもたらしたと試算。16年には、災害で2350万人が避難民になったと指摘した。

 世界食糧計画は、昨年の干ばつに伴い、アフリカを中心に、23カ国の3900万人が飢餓状態に置かれたと報告している。

 国際エネルギー機関によると、17年の世界の二酸化炭素排出量は325億トンで、前年に比べ1・4%増加した。化石燃料の消費が増えたためという。

 パリ協定は、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指す。これに基づき、参加国は温室効果ガスの削減目標を掲げる。

 ただ、多くの科学者が、仮に全参加国が目標を達成しても、気温上昇は抑えられないと予測している。いまの目標を大幅に上回る対策が不可欠な状況にある。

 トランプ米大統領は、経済的理由から、オバマ前政権が打ち立てた温暖化対策を撤廃した。国際社会をけん引してきたドイツのメルケル首相は、連立政権の樹立と引き換えに、ガス削減目標の後退を余儀なくされている。

 パリ協定では、ガス削減の検証方法や削減目標の見直しのあり方を巡り、先進国と途上国の対立が続く。日本政府がまとめ役を担いたいところだけれど、石炭火力に強く依存する政策は批判の的となっており、自然エネルギー導入の面で後れを取ってもいる。

 自国の利益が前面に出て、国際協調路線に陰りが見えていることが気にかかる。

 年に2600万人が貧困状態に陥る、経済損失は56兆円に上る、海面上昇で50年までに2億人が居住地を追われる―。対策が停滞した場合に世界が直面する事態だ。危機感を共有し直したい。

(3月26日)

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