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斜面

メキシコ市で果物の盛り皿を買ったときだった。男の子が寄ってきて「ちょうだい」と言う。分けようとすると現地の友人にたしなめられた。見返ると、子どもは数人に増えている。タイでは、両足のない少年が飲食店の床をはい、客に小銭をせがむ光景を目にした

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二十数年前の旅の記憶だ。こちらの戸惑いに周りの大人が注意を払う様子はない。それに、その子たちが浮かべる屈託のない笑顔。二十歳前後の当時、その社会が抱えている構造的な問題よりも、日常をありのまま受け入れる包容力、開放感が印象に残った

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英国の財団が先日、29カ国の親を対象にした意識調査の結果を発表した。「子どもの将来を楽観視している」と回答した日本の親の割合は28%で、平均の60%を大きく下回っている。子どもの勉強を手伝う時間が「ゼロ」とした割合は、日本の親が突出して高く、「時間がない」が一番の理由に挙がっている

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日本はこの先、超高齢社会を迎え、人口も減る。税金や社会保険料は、仕事や家庭は…心配の種は尽きない。けれど、社会制度の先行きだけが原因だろうか。「楽観視している」親が、途上国に多いという結果は興味を引く

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国際間の比較調査の回答には、それぞれの国民気質も表れるように思う。結果に一喜一憂することはないものの、大切な問題提起を含む。楽観視できない私たちの意識と行動を縛るもの、見失っているものは何だろう。他国との相違から考えさせられる。

(3月26日)

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