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八ケ岳遭難 雪山の危険肝に銘じて

 青空が広がり、風も穏やかな登山日和だったようだ。それだけに、雪山の登山に油断や過信は禁物だとあらためて思わされる。

 八ケ岳連峰の阿弥陀岳で登山者7人が滑落した。3人が死亡、4人が重軽傷を負っている。南稜の「P3」と呼ばれる岩峰付近から急斜面を落ちた。亡くなった3人は、滑落に伴う雪崩に埋まり、窒息したとみられる。

 南稜は一般の登山道よりも難しいルートとして人気がある。現場付近は最大の難所で、頻繁に事故が起きている。昨年2月には大学生2人が滑落し、1人が死亡。一昨年3月にも3人が雪崩に遭い、1人が死亡した。

 雪の状態が変わりやすいこの時季はとりわけ、慎重な状況判断と確かな技量が必要だと山岳関係者は話す。一帯には数日前にまとまった雪が降った。その後、気温が上がって雪が不安定になっていた可能性がある。

 7人は30〜60代の男女で、関西の同じ山岳会に所属する。救助された人の話では、先頭の人が足を滑らせたという。それぞれの体をザイル(登山用のロープ)でつないで登っていたようだ。

 誰かが滑落した場合に備える安全対策だが、全員が巻き込まれている。7人が一気に落ちる危険があるような登り方は考えられないとの指摘がある。どんな状況だったのか、疑問が残る。

 春山には冬山とはまた異なる怖さがある。日中の日差しや暖かさで雪が解け、足場が悪くなったり、夜中に凍って滑りやすくなったりする。天候が穏やかでも気を抜けない。雪の斜面はどこも転落、滑落の危険と隣り合わせだ。

 雪崩への注意も怠れない。ちょうど1年前の今日、栃木県那須町で登山の講習会に参加した高校生らが雪崩に襲われる事故があった。8人が死亡している。雪山の怖さを軽視して起きた惨事をあらためて胸に刻みたい。

 東京・奥多摩では先週、日帰りの予定で登山した男女13人が雪で下山できなくなり、救助された。装備が不十分で何人かは凍傷になっていたという。救助が遅れていたらと思うとぞっとする。

 里は日ごとに春めいても、山にはまだ雪が降る。天候が崩れれば一気に冬に逆戻りして厳しい寒さにさらされる。体温を奪われて凍死した事例も目立つ。

 これから大型連休にかけて山に出かける人は増える。何より大事なのは登山者自身の心掛けと準備だ。山を見くびると命取りになることを肝に銘じたい。

(3月27日)

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