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優生審査会 ずさんな実態が次々と

 旧優生保護法の下で障害者らに不妊手術を強制した際の手続きのずさんさが次々と明らかになっている。政府は被害者の把握を進めるとともに、法の運用や審査の実態を徹底して解明しなければならない。

 本人の同意がない強制手術は、医師が申請し、都道府県の「優生保護審査会」が可否を決めた。委員には、所管部局の幹部のほか、医師の代表や保健所長、裁判官、民生委員らが選任されていた。

 その審査手続きが形骸化していたことを示す事例が各地で確認されている。会合を開かず、持ち回りの書類審査で手術が決まった人が、分かっただけで岐阜、三重、福岡の3県に計8人いた。ほかにも相当数に上るとみられる。

 法施行後5年の1953年に政府が出した通知は、審査の形式化に注意を促し、持ち回りは適当でないと明記している。そのこと自体、早くから形式化が目についた実態を物語る。持ち回りは通知後も各地で続いた。3県8人の審査は60年代以降である。

 長野県では、82年に強制手術を受けたとされる女性の手術報告書に「任意」の記載があった。同意を得たとされるほかの事例にも、実際は強制だった人が含まれている可能性を指し示す。

 強制手術を受けた宮城県の女性が国に損害賠償を求めた裁判が始まった。当事者として初めて提訴したこの女性の場合は「遺伝性精神薄弱」という理由そのものが疑わしい。優生手術の記録とは別の開示資料には遺伝の要因はないと記されている。口蓋裂(こうがいれつ)の手術の麻酔で障害が残ったという。

 政府は、旧法下での優生手術は合法的に、厳正な手続きに基づいて行われたとして、被害の補償を拒んできた。その主張は土台から崩れている。人権と尊厳を踏みにじられた被害者に背を向け続けることは許されない。

 厚生労働省は実態調査にすら応じなかった方針を転換し、与党が発足させた作業部会の要請に応じる形で4月にも調査を始めることを決めた。まずは都道府県に資料の保全を求めるという。

 法の改定から20年以上が過ぎ、都道府県に残る記録や資料は限られる。被害実態の解明には、手術をした医療機関や障害者の施設などにも関係する資料がないか、掘り起こしが欠かせない。

 当事者、関係者の証言を集めることを含め、社会全体に取り組みを広げたい。政府には、それを主導し、幅広い被害者の補償につなげていく責任がある。

(3月29日)

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