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強制不妊手術 人権軽視の実態浮かぶ

妊娠10カ月の女性の優生手術申請書。「分娩後、永久不妊手術を希望」と記されていた妊娠10カ月の女性の優生手術申請書。「分娩後、永久不妊手術を希望」と記されていた
 旧優生保護法(1948〜96年)下で障害者らに強制不妊手術が繰り返された問題で、県内で70年代に行われた男女の手術申請2件に関する県の文書から28日までに、当時の医師や行政が知的障害者の人権を軽視していた実態が浮かび上がった。医学的根拠のない「男性ホルモンの抑制」が理由になっていたり、妊娠中の女性について出産直後の手術を検討したりしていた。

 強制手術に関して個人名が記された資料が県に残っていたのは5人で、今回の男女はこの中に含まれる。県は27日に文書の一部を公開していた。専門家は、当時の実態を明らかにするために、一つ一つの事例を丁寧に検証していく必要があると指摘している。

 旧優生保護法は、手術が必要と判断した医師が、行政、医療、司法などの代表者らで構成する都道府県の「優生保護審査会」に申請し、認められれば本人の同意がない強制不妊手術を行っていた。

 77(昭和52)年の「優生手術申請書」によると、当時20代だった須坂市の男性について、精神科医が「精神薄弱で(わいせつ行為などの)性的異常行動が頻回に認められ」と申請理由を記載。「予防のために、優性手術による男性ホルモンの抑制効果も合わせて期待したい」(原文のまま)としていた。同年10月11日付「優生手術適否決定通知書」では、県の審査会がこの男性への手術を「適当」と判断していた。

 79年に30代だった中野市の女性の同年2月15日付手術申請書には、付記欄に「患者は妊娠10カ月。予定日は3月9日」「分娩(ぶんべん)後、永久不妊手術を希望しております」とあった。産婦人科医が書いた申請理由は「遺伝性精神薄弱」で、「知識に乏しく会話、行動に劣り(中略)新生児の保育及びその後の避妊等独立的判断は不能と思える」としていた。男女2人に手術が行われたかどうかは分かっていない。

 立命館大生存学研究センター客員研究員の利光恵子さん(64)によると、旧優生保護法に基づく男性の不妊手術は精管を縛る方法で、男性ホルモンの抑制効果はないと指摘。「医学的な根拠を欠き、予断と偏見に満ちた記述」とする。妊婦についての申請も、「本人が手術を希望しているのであれば、審査会への強制手術申請の必要はなく、制度が理解されていたのか疑問。当時の障害者に対する人権意識の低さが表れている」としている。

 県内の強制不妊手術は、50〜79年に474件行われたことが県の統計で判明している。一方、男女5人の個人名が記された資料が見つかり、上高井郡小布施町の女性1人については手術が行われたとみられることが明らかになっている。

(3月29日)

長野県のニュース(3月29日)