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大嘗祭 国費支出に疑問がある

 天皇陛下の退位や新天皇の即位に伴う儀式のあり方を検討していた政府の準備委員会がきのう、基本方針を決めた。

 代替わりの前後に10の儀式・行事を行う。うち七つの儀式は憲法上の国事行為に位置付けた。

 祭祀(さいし)である大嘗祭(だいじょうさい)は、憲法の政教分離原則に配慮して国事行為にしなかったものの、公的な皇室行事とした。宮廷費として国費が支出される。

 国の宗教的活動を禁じる憲法の規定との兼ね合いが問題になる。祝賀ムードに流されず、冷静な議論が必要だ。

 大嘗祭は、天皇が即位後、初めて行う特別な新嘗祭(にいなめさい)のことだ。その年に収穫された米などを天照大神(あまてらすおおみかみ)などの神々に供え、自らも口にして五穀豊穣(ほうじょう)に感謝する。

 毎年秋に行う新嘗祭と違い、巨大な祭場「大嘗宮」を皇居内に造営する。殿内には神座がある。

 平成の代替わりの前回は公的な性格があるとして、約25億円が投じられた。

 当時、各地で違憲訴訟が起こされたが、いずれも損害賠償などの訴えは退けられた。目を向けなければならないのは、高裁段階で疑問が呈されたことである。

 大阪高裁は「国家神道に対する助長、促進になるような行為として、政教分離規定に違反するとの疑義を一概に否定できない」と指摘。福岡高裁宮崎支部も「憲法に明確に適合するよう工夫すべき問題を残している」と判断した。

 政府は前回の式典内容を基本的に踏襲する方針を示している。

 そもそも前回の大嘗祭は、天皇が統治権を一手に掌握する総攬(そうらん)者であり神聖不可侵だった明治憲法下で定められた様式を踏まえている。象徴天皇制の現憲法に合うように、との司法の注文はもっともである。

 前例踏襲ではなく、前回の儀式を検証し、考え直す必要がある。

 国事行為とされた儀式にも疑問が残る。神話に基づく「三種の神器」の剣や勾玉(まがたま)を受け継ぐ「剣璽(けんじ)等承継の儀」には、宗教的色彩があるとみる憲法学者もいる。

 国事行為はあくまで天皇の行為である。秋篠宮さまが皇位継承順1位の皇嗣(こうし)に就いたことを広く明らかにする「立皇嗣の礼」が当てはまるのだろうか。

 国会は退位の法整備を巡り、「静かな環境で」との掛け声の下、オープンな議論を避けた経緯がある。今度こそ開かれた場でしっかり議論し、国民の総意形成に努めるべきである。

(3月31日)

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