長野県のニュース

高齢者虐待 背景に目を向けてこそ

 高齢者への虐待が年々深刻になっている。

 厚生労働省が2016年度の調査結果を発表した。介護施設の職員、介護する家族らによる虐待は増加の一途をたどっている。

 虐待した個人の問題にとどめることはできない。何が虐待を生んでいるのか、背景を検証し、対策を急ぎたい。

 虐待の中でも特別養護老人ホームなどの施設職員によるものは452件あり、過去最多を更新した。10年前の8倍に増えている。

 自治体に通報があった事例だけなので、氷山の一角と言えよう。

 施設職員による虐待の種類(複数回答)は、拘束などの身体的虐待が7割近くを占め、暴言などの心理的虐待、介護放棄がそれぞれ3割近くあった。

 見逃せないのは、高齢者が認知症の場合に身体的虐待を受ける割合が特に高くなることだ。

 意思疎通がうまくいかず、身の回りのことが思い通りにできない。それゆえの介護のはずなのに虐待で返してしまう。高齢者の尊厳を傷つけ、施設への信頼も失いかねない。

 調査では、虐待の発生要因として「職員の教育・知識・介護技術に関する問題」が最も多かった。「ストレスや感情コントロール」、「倫理観や理念の欠如」が続いた。職員の研修を充実し、技量を向上させることが大切なのは言うまでもない。

 同時に職員が働きやすい環境を整えることが必要だ。

 介護報酬の改定で職員の月給はわずかに上がったものの全産業平均を9万円近く下回る。中途退職者も多く、慢性的な人手不足は解消されていない。

 その結果、夜勤も頻繁で、職員1人にかかる負担は大きい。疲れやストレスをため込み、思い通りにならないことへの暴言や暴力につながりやすい―。専門家が指摘する負の連鎖である。

 さらなる待遇の改善で人材を集め、介護に余裕を持たせることが欠かせない。その前提として国はどんな労働環境で虐待が起きているかを調べるべきだ。

 今回の調査で家庭での虐待は1万6千件余に上った。高齢者25人が亡くなった。松本市では昨年、認知機能が低下した当時79歳の母親を娘が自宅で暴行し、死なせる事件も起きている。

 虐待の要因は「介護疲れ・ストレス」が最も多い。介護保険サービスの利用を促すとともに、在宅で介護する人を孤立させない地域の支えも求められている。

(4月2日)

最近の社説