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〈野を焼けば焔(ほのお)一枚立ちすすむ〉山口青邨。風を巻き起こして燃え広がる野焼きの炎は獣のよう。〈はしりきて二つの畦(あぜ)火相搏(う)てる〉加藤楸邨。両側から放たれた火はぶつかると膨らみ、たちまち鎮まる。炎の躍動は見ていても面白い

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野良仕事の始まりを告げる早春の風物詩には野焼く、畑焼く、草焼く、畦焼く、山火など多くの季語がある。はやる気持ちを抑えて火を入れると土手は一気にきれいになる。冬を越した害虫や雑草の種を駆除でき、灰は肥料に。効率のいい大掃除である

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県内では今シーズンも下草火災が相次いでいる。枯れ草や枯れ枝で止まらず、作業小屋や住宅に延焼したり、山林に広がったり。急ぎ足の春にせかされるように急増し、上田小県地域の先月の発生は昨年同月の約3倍、16件という。とりわけ死者やけが人が出ている事態は深刻だ

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こうも乾燥が続くと火の誘導は慣れていても難しい。慌てて消そうとして巻き込まれることも。先月、中野市で犠牲になった男性もそうした事故とみられている。休耕地が増えて燃え広がりやすくなった。光の加減で炎が見えにくいのも今ごろの特徴だ

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各消防本部は注意喚起に力を入れる。できるだけ1人でやらない工夫も大切という。東御市では実施日を決めて、消防団がもしもの事態に備えたうえで一斉に野焼きをする地区もある。そうでなくとも農業の担い手は高齢化が進んでいる。“昔取った杵柄(きねづか)”とばかりの過信は禁物のようだ。

(4月3日)

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