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憲法の岐路 国民投票法 資金力がものいう恐れ

 憲法を変えるかどうかは主権者である国民の投票によって最終的に決まる。ところが、その手続きを定めた国民投票法は根本的な欠陥が残ったままだ。

 国や社会のあり方の根幹にかかわる投票で、最も重んじるべき公正さを保てない恐れが大きい。自民党が改憲の国会発議を急ぐのはそもそも無理がある。

 一つは、投票の成立条件となる最低投票率を定めていないことだ。投票率が低ければ、過半数の賛成を得ても国民の多数が支持したことにはならない。

 それを主権者の意思と見なせるのか疑問である。最低投票率や、改憲案の承認に必要な絶対得票率(有権者全体に占める割合)の明記を検討すべきだ。

 もう一つは、運動資金の規制がなく、広告宣伝にいくらでも費用をかけられることだ。資金力がある組織によって意見が誘導される懸念がある。

 特に問題視されているのがテレビCMだ。賛成、反対の投票を呼びかけるCMこそ投票日の2週間前から禁止されるが、「私は賛成」などと言うだけの意見広告なら当日まで流せる。

 CMには多額な費用がかかるだけに資金力がものをいう。流せる量や、枠を確保できる時間帯にも差が出る。国内最大の広告代理店で、メディアに大きな影響力を持つ電通が自民党の広告宣伝を担っていることも見落とせない。

 国民投票法は2007年に成立した。その過程で、広告規制の必要性も議論されたが、メディアへの介入の恐れがあるとして放送事業者の自主的な取り組みに委ねられた経緯がある。

 10年余を経て自主的なルールづくりはまったく進んでいない。放送各社は託された責務を果たさなくてはならない。

 欧州の主な国は有料のCMを制度上禁じている。英国は欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票の際、無料の放送枠を設け、その他のCMは禁止した。また、支出が一定額以上の団体を登録制とし、収支報告を義務づけた。

 野党の立憲民主党はCM規制の強化を含む改正法案を今国会に提出する方針だ。与党内でも公明党が衆参両院の憲法審査会で議題にすることを求めている。

 自由な運動を認めて活発な議論を促しつつ、公正さをどう確保するか。国会で丁寧に議論し、制度の不備を補わなくてはならない。

(4月3日)

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