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安保関連法を審議していた2015年9月の国会。共産党が突きつけた文書に特別委はざわめいた。前年12月に訪米した防衛省統合幕僚長と米軍幹部の会談記録という。統幕長は内容も固まっていない関連法の成立見通しを伝えていた

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防衛省は「同じ文書は存在しない」と答弁しつつ漏えいの犯人捜しに躍起になった。間もなく情報本部に所属する自衛官を取り調べた。「行政の長も激怒しているんだぞ」。自衛官は警務官にそう恫喝(どうかつ)されたという。青木理著「情報隠蔽(いんぺい)国家」に詳しい

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自衛官は類似する文書をメールで受け取っていた。国会で問題化した後、統幕から廃棄を命じられたそうだ。身に覚えのない情報漏えいの嫌疑をかけられ違法な取り調べを受けたと国に慰謝料を求めて提訴。文書が存在しないというならなぜ捜査したのかと疑問を突きつけている

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「存在していない」はずの文書がまた見つかった。陸上自衛隊のイラク派遣日報だ。撃つか撃たれるか厳しい選択を迫られた状況が記録されている可能性もある。隠蔽していたのかは分からないが、政府にとって不明のままでいてほしい文書だったろう

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精神分析の先駆者フロイトは思い出したくない記憶が他の記憶の姿を借りて現れることを「隠蔽記憶」と名付けた。イラク派遣後、自殺した隊員もいる。心の底に深い痛手を封印していないか。不都合な事実も公表し記憶を共有する。それができない国家はつまるところ個人を犠牲にする。

(4月4日)

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