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科学と軍事 一線画す議論深めねば

 政府による介入が著しく、問題が多い―。防衛省が資金を助成する研究公募制度について、日本学術会議が声明を決議してから1年が過ぎた。

 助成制度は昨年度、予算枠が大幅に拡充されたが、大学からの応募は前年度とほぼ同じだった。国内の科学者を代表する機関が強い懸念を示したことが、一定の歯止めになったと見ていい。

 声明は一方で、大学や研究機関に、軍事と関わり得る研究について審査する制度を設けるよう求めた。けれども、学術会議の調査によると、審査の指針や手続きを定めたのは3割余にとどまる。

 基礎研究や民生分野の研究を軍事に取り込む動きは目に見えて強まっている。大学が研究資金不足にあえぐ現実もある。

 「基礎研究は軍事研究にあたらない」などとして容認する声が研究者の間で目立つようになった。軍事研究への関与がなし崩しに進む懸念は依然大きい。

 かつて戦争に科学が動員された反省を踏まえ、学術会議は戦後、「軍事研究は絶対に行わない」とする決意を繰り返し表明した。その根幹が揺らいでいる。原点を再確認し、研究者、科学界が果たすべき責任について共通認識を形づくることが欠かせない。

 基礎研究であっても成果が軍事目的に利用され得るなら、どう防ぐかを考える責任が科学者にはある。デュアルユース(軍民両用)だからと正当化はできない。

 声明は、憲法が保障する学問の自由、大学の自治が侵されることをとりわけ重く見た。介入が顕著な例として、防衛装備庁の職員が研究の進捗(しんちょく)管理にあたることを挙げている。各大学、研究機関は、研究の土台である学問の自由を自ら守るため、明確な姿勢を打ち出さなくてはならない。

 法政大や関西大をはじめ、応募禁止を決めた大学も少なくない。京都大は軍事研究を行わない基本方針を定めた。信州大も学内の研究が軍事目的に利用されないか審査する仕組みを設けている。

 他方で、学術会議の調査からは、様子見のところがなお多いことがうかがえる。学術会議の会長を務める山極寿一・京大学長は調査結果を踏まえ、統一した指針案を示す必要性に言及した。

 その是非を含め、科学が軍事に取り込まれないために何をすべきか。幅広い研究者が意見を交わすとともに、科学界にとどまらず社会全体で議論を深める必要がある。学術会議はそれを主導する役割を担うべきだ。

(4月6日)

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