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働き方改革 審議できる状況にない

 国会で審議する前に多くの疑問に答えなければならない。

 政府がきのう閣議決定した働き方改革関連法案である。今国会の最重要法案と位置付けて、6月20日の会期末までの成立を目指すという。

 残業時間の規制のほか、一部専門職を労働時間規制の対象から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)創設などが含まれる。

 問題が多い法案だ。このまま成立させてはならない。時間をかけて問題点を浮き彫りにし、多くの修正をする必要がある。

 それなのに、国会は法案を審議できる状況にはない。

 野村不動産に対する東京労働局の特別指導で、政府が国会答弁で印象操作をした疑いがある。

 同社では、裁量労働制を違法に適用された男性社員が過労自殺し、後に労災認定を受けた。東京労働局は昨年12月、同社を特別指導し、是正勧告もした。

 政府答弁は、法案に盛り込む予定だった裁量制の対象拡大の審議でなされた。

 安倍晋三首相は長時間労働につながる可能性を問われ、指導監督が機能した好事例として、同社への特別指導を挙げた。加藤勝信厚生労働相も同様に答弁した。

 問題はその際に、過労自殺の事実に触れなかったことだ。

 同社の裁量制乱用は、過労自殺の労災申請で発覚し、特別指導につながった。不正を指導で防いだ事例ではない。むしろ指導が機能していないことを示している。

 通常は公表されない特別指導が発表された経緯も不明だ。

 政府は裁量制拡大のため、特別指導を恣意(しい)的に利用したのではないか。裁量制調査の不適切データ処理に続く問題だ。労働行政に対する政府の姿勢が問われる。

 焦点は、首相らが答弁の時点で過労自殺の報告を受けていたかどうかにある。

 厚労省は先月、加藤氏が特別指導について事前報告を受けた際の文書を国会提出した。多くは黒塗りで事実は明らかになっていない。加藤氏は「報告を受けていない」と答弁しているものの、疑念は拭えない。

 働き方改革関連法案に含まれる高プロは、裁量制と同様に乱用され、長時間労働につながる可能性がある。国の指導監督は最低限の防止策だ。政府が都合のいい事実のみを公表するのなら、法案の審議をしても政府答弁は信用できない。黒塗り部分を早急に公開し、責任の所在を明確にするべきだ。法案の審議はその後である。

(4月7日)

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