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シリア内戦 市民の犠牲食い止めねば

 シリアの首都近くで化学兵器の塩素ガス弾が使われた疑いが浮上している。英国の人権監視団によると、多数の市民が窒息死した。

 「イスラム国」(IS)掃討後も、シリア情勢が沈静化に向かう兆しが見えない。ロシア、トルコ、イラン、欧米諸国それぞれが思惑を絡めて干渉し、事態を複雑にしている。

 戦闘に巻き込まれて死亡する市民は増え続け、故郷を追われる人々も後を絶たない。とりわけ、多くの子どもたちが犠牲になっている現状は見過ごせない。

 国際社会は人道の観点に立ち、戦闘の即時停止を関係国に強く迫らなければならない。

 シリア内戦は、2011年の反政府デモを発端に始まった。

 欧米は、民主化を訴える反体制派を支持しながらも本格的な軍事介入は控えてきた。一方、自国の軍事基地があるロシア、宗派が近いイランは軍事介入し、アサド政権を支えてきた。

 反体制派のクルド人勢力が内戦下で支配地域を広げると、自国にクルド民族の分離独立派を抱えるトルコは警戒感を強めた。今年1月には、クルド人勢力が掌握するシリア北西部に進軍し、制圧。クルド人側を支援する米軍との間で緊張が高まっている。

 塩素ガス弾は、反体制派の拠点である東グータ地区で使用されたとみられる。政権軍とロシア軍によって既に95%が制圧されている地区だ。残忍な化学兵器を用いる必要があったのか。

 内戦が常態化した13年8月から今年2月にかけ、85件の化学兵器による攻撃が確認された―との国際人権団体の報告もある。

 長引く戦闘で40万人以上が死亡し、国内外の避難民は1千万人を超えている。昨年だけで千人の子どもたちが犠牲になった。難民になった子も280万人に上る。

 ロシア、トルコ、イランの3首脳は今月、シリア情勢を巡って会談し、和平に向けて協力を続けるとの共同声明を出した。「軍事解決はあり得ない」と、政治交渉の重要性を強調している。

 そのロシアも、国連安全保障理事会では、シリアの人道状況に関する会合の開催にさえ反対した。主導権をにらんでか、欧米と歩調を合わせようとしない。

 唐突にシリアからの早期撤収を言い出したトランプ米大統領といい、強国の利己主義が際立つ。国際社会は国連総会を活用し、反体制派を含め、幅広く合意を得られる和平方策を探ってほしい。手をこまぬいてはいられない。

(4月10日)

長野県のニュース(4月10日)