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障害者の監禁 相次ぐ事件が映すもの

 立ち上がることもできない狭い檻(おり)の中に16歳のころからおよそ25年間も閉じ込められていたという。保護されたとき、目はほとんど見えない状態だった。言葉を失う事件である。

 精神に障害がある長男を監禁した疑いで、兵庫県三田市に住む70代の父親が逮捕された。檻は自宅母屋とつながったプレハブの部屋に置かれ、広さは1畳ほど、高さも1メートルほどしかない。出入り口には南京錠をかけていた。

 退院して家に戻る妻の介護について容疑者が福祉関係者に相談した際、長男を檻に入れていることを明かし、2日後に市の職員が訪問して見つけた。檻にはペット用のトイレシートが敷かれ、服は上半身しか着ていなかった。

 暴れて騒ぎ、近所から何度も苦情があった。迷惑になると思った―。閉じ込めた理由を容疑者はそう話したという。プレハブの窓を割ったこともあり、檻に入れて手が届かなくしたようだ。

 行動の自由を奪うことは人権と尊厳を著しく損なう虐待である。どんな理由、事情があったにせよ、許されることではない。長男は社会とのつながりを不当に断たれ、医療や福祉の支援を受けることもできなかった。

 市は、檻に入れられていることを職員が確認した時点ですぐに保護せず、4日後に受診させてから福祉施設に入所させている。生命や身体に重大な危険がある状態ではないと判断したと説明するが、疑問が残る対応である。

 大阪府寝屋川市では昨年12月、プレハブの部屋に10年以上閉じ込められていた30代の女性が凍死する事件があった。両親が監禁などの罪で起訴されている。精神疾患があったこの女性は、十分な食事を与えられずに衰弱し、死亡時の体重は19キロしかなかった。

 精神疾患や知的障害がある子どもを親が抱え込んでしまう事例は少なくない。精神障害者への偏見が根強いことも、世間の目を恐れて家の中に隠そうとすることにつながっている。

 かつて日本では「私宅監置」が法で定められていた。精神障害者を自宅に閉じ込めておくよう国が家族に義務づけた、極めて差別的な制度である。

 戦後の1950年に廃止されたが、70年近くを経てなお、当時の意識が消えずに残っているのだとしたら、やり切れない思いがする。当事者と家族を支え、虐待を防ぐ手だてを考えるとともに、相次ぐ監禁事件が映し出す社会のあり方に目を向けたい。

(4月14日)

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