長野県のニュース

斜面

静岡県からやって来た夫婦は「西の吉野、東の陸郷(りくごう)」というネット上の紹介に誘われたのだという。きのうの本紙、池田町陸郷のヤマザクラの記事にある。濃淡のピンクが山を彩る上空からの写真で、数十年前との変わりように驚いた

   ◆

名所は犀川に面した山の斜面にある。地滑りの多い傾斜地で、かつては桑畑が広がっていた。養蚕の衰退とともに畑は荒れ、地区は過疎が進んだ。30年ほど前、ここに自生するヤマザクラに加えて苗木を植え始めたのが建設業を営む水野龍二さん(71)だ

   ◆

住民が誇りを持てる魅力的な土地にしたいとの思いからだった。オオヤマザクラ、コヒガンザクラ、ソメイヨシノなど4千本以上を植え続け、重機を使ってハーブの観光農園も開設した。桜が成長した今、一帯はのどかな山里の情緒が漂う。遠方からも人々が訪れるようになった

   ◆

後の世代のため植林に励んでいる、ある林業家に、何が原動力なのかと尋ねたことがある。「誰のためというよりも、木々が成長した光景が目に浮かぶ作業だから楽しい」と答えてくれた。桜の山々を夢見て整備を続けた水野さんも同じ思いだったろう

   ◆

古来、多くの歌人に愛され、人々を魅了してきた奈良・吉野山。それに肩を並べる夢となれば、一帯の山を宝に変えようと挑戦する地元の大きな励みになるに違いない。今シーズンはソメイヨシノもヤマザクラも一斉でお花見は気ぜわしい。これからは新緑に映える高所の桜が魅力という。

(4月14日)

最近の斜面