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米国とシリア 報復攻撃に利点はない

 シリアでの化学兵器使用疑惑を巡る米ロの対立が深まっている。

 アサド政権が使ったとみる米政府は、英仏両国と連携し、報復攻撃に踏み切る構えを崩していない。政権の後ろ盾であるロシアは、疑惑は米国のでっち上げだとし、対抗措置を取るとけん制している。

 米欧とロシアが交戦する事態になれば、シリアの混乱に拍車がかかり、犠牲になる市民がさらに増える恐れが強い。

 化学兵器の利用はもとより、泥沼化する内戦を止め、シリアを平常に導く方策にこそ関係国は知恵を絞らなくてはならない。交渉の場で妥協点を探るべきだ。

 シリアの被害者の検体から化学物質が見つかったとの情報はあるものの、どのような兵器なのか、はっきりしていない。米政府も、アサド政権が用いたとする証拠を提示できていない。

 ロシアは化学兵器使用の事実はないと主張し、「軍事介入のための口実だ」と批判している。

 仮にアサド政権による攻撃だったとしても、報復で事態が改善に向かうとは思えない。

 米軍は昨年4月、政権が神経剤サリンを使って空爆したと断定しシリア国内の空軍基地に巡航ミサイルを撃ち込んだ。しかし、その後も政権の関与が疑われる化学兵器の使用は続いている。

 今度の攻撃は、より規模が大きくなるとの見方がある。強固な対空、対ミサイル防衛網を備えるシリア政府軍に加え、アサド政権を支援するイラン、クルド人勢力を巡って米軍と対立するトルコなどを巻き込み、交戦状態が長引くかもしれない。

 何より、米国がどこまでシリア情勢に関与するつもりか、判然としないところに問題がある。

 トランプ米大統領は3月、シリアからの米軍の早期撤収を突然に言いだした。民主化を求めてきた反体制派からは「国際社会の協力の機運が一気に衰退する」との声が上がっている。

 200億円余のシリア復興基金への拠出凍結も指示したという。パレスチナに続き、民生援助からも手を引く考えのようだ。

 一方、ロシアとの関係は、外交官の相互追放や経済制裁で悪化し冷戦さながらの核軍拡競争を繰り広げようとしている。

 派手な報復攻撃に打って出たところで、外交上の利益は得られない。中東情勢でも、北朝鮮情勢でも、一つ一つ布石を打ち、他の国々を納得させる外交戦略を示してもらいたい。

(4月14日)

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