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これほど惨劇が続くとは誰が予想したろう。発端は7年前、中東の民主化運動「アラブの春」が波及した反政府デモだ。アサド政権の武力弾圧に反体制派が蜂起し、シリア内戦は広がった。日本では大震災に目を奪われ関心が薄かった

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混乱に乗じて台頭した過激派組織「イスラム国」(IS)が不幸に輪を掛けた。IS衰退後も政権軍、反体制派、クルド人の3勢力が争う。これを米ロや周辺国が応援し混迷を深めた。東西文明が交差する“世界遺産の宝庫”は今や見るも無残な状況だ

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人口の約半数1千万人超が難民となり、死者は40万人以上とされる。痛ましいのは子どもたちだ。トルコの海岸に遺体で漂着した難民の幼児の写真が世界に衝撃を与えた。昨秋、東グータ地区を包囲した政府軍の砲撃で母と左目を失った乳児の写真も、住民の嘆きが伝わってきた

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米英仏が踏み切った政権側へのミサイル攻撃は、劣勢となった反体制派の拠点、東グータに非人道的な化学兵器を使ったとの理由である。だがこれが解決につながるだろうか。トランプ米大統領はシリアから手を引くと言いながら強硬策を指示している

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場当たり的な対応ではアサド政権からも生半可と見透かされよう。政権の後ろ盾であるロシアを巻き込み、本気で取り組む気はあるのか。「今世紀最悪の人道危機」といわれるシリア内戦。国内外へのパフォーマンスで終わるとすれば危機を高めただけだ。トランプ氏の責任は重大である。

(4月15日)

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