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海賊版サイト 疑義を残した緊急対策

 インターネット上で漫画や雑誌などを無料で読める「海賊版サイト」を巡り、政府が緊急対策を決定した。利用者の接続を遮断する「ブロッキング」に踏み込んでいる。

 著作権を保護する取り組みは必要だ。とはいえ、今回の対策は丁寧な議論を欠いている。政府の拙速な進め方は問題が大きい。

 著作権者の了解を得ないまま無料で読めるようにしているサイトだ。主な海賊版サイトによる著作権侵害の損失額は約4千億円に上るとの推計もある。日本漫画家協会は2月に「利益をむさぼっている」などと強く批判する異例の声明を発表した。

 著作権侵害を横行させてはおけない。コンテンツ産業の衰退にもつながる恐れがある。

 緊急対策は、安倍晋三首相や関係閣僚、民間の有識者らによる知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議で決めた。悪質なサイトはプロバイダー(接続業者)が利用者のネット接続を遮断するのが適当との見解を示している。

 事業者の自主的な対応を促す形だ。当面は特に悪質な3サイトに対象を限定した。新たなサイトが現れた場合は政府が事業者や有識者を招いた協議体を設置して対応を検討するという。

 問題は、通信の秘密を定めた憲法21条との兼ね合いである。接続を遮断するには利用者の接続先をチェックする必要があり、通信の秘密を侵害すると法学者らが指摘している。接続業者が加盟する協会は、憲法が禁じる検閲に当たる恐れがあるとの声明を出した。

 「遮断以外の手法は存在しないと考える余地がある」といった政府の説明はいかにも弱い。

 接続遮断はこれまで児童ポルノに限って行われてきた。実施が適切か慎重に議論を重ねた上でのことだ。十分に検討することなく政府の見解で拡大できるなら、なし崩しに対象が広がりかねない。

 政府は引き続き法制度の整備を検討し、来年の通常国会で関連法の成立を目指す。遮断の法的根拠を明確にし、恒久的な措置とするためだ。海賊版サイトをリンク先としてまとめ、ネット利用者を誘導する「リーチサイト」の規制も考えている。

 憲法に照らして妥当か、実効性はどこまであるのか、他に方法はないか、実施がやむを得ないとすれば運用監視の仕組みや対象拡大の歯止め策をどう整えるか…。検討すべき課題は多い。国会はもちろん、社会全体で議論を深めなくてはならない。

(4月16日)

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