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日本郵政 社員手当廃止は筋違い

 日本郵政が、一部正社員に支給している住居手当などを廃止することが分かった。

 転居を伴う転勤が原則としてない正社員約5千人に支払われている。同じ条件の非正規社員には支払わない手当である。格差を是正するため、正社員の待遇を引き下げるという。

 同一労働同一賃金は、正社員と非正規労働者の間にある不合理な待遇格差を是正するのが目的だ。非正規の収入を増やし、安心して働ける環境をつくるのが筋だ。正社員の待遇を引き下げるのは本末転倒である。

 国内の非正規労働者は全体の約4割を占め、待遇差は大きい。パート労働者の時給は、欧州ではフルタイムで働く人の7〜8割なのに対し、日本は6割程度にとどまる。非正規労働者の待遇改善は喫緊の課題である。

 日本郵政は正社員約20万人に対し、非正規労働者が約19万人にいる巨大組織だ。影響力は大きい。経済界には非正規の待遇改善が人件費増につながると懸念する声が根強い。今回の手当廃止をきっかけにして、同様の動きが広がることが心配だ。

 日本郵政の対応には問題が多い。同社傘下の日本郵便では、同じ仕事なのに休暇制度や手当に格差があるのは違法として、契約社員が待遇改善と手当の差額支払いを求めて提訴している。

 昨年9月に東京地裁、今年2月に大阪地裁で判決が出て、それぞれ住居手当や年末年始の勤務手当などの格差を違法と認めている。原告、被告とも控訴し、係争中だ。日本郵便は一審判決をどう受け止めたのか。

 一審で格差が違法とされた年末年始の手当でも、正社員の年末勤務手当を廃止している。非正規には正社員と同様の年始勤務手当を新設しているものの、正社員の待遇を引き下げて、格差の是正を目指す方針が明確だ。

 待遇の格差を是正すれば、違法でなくなる可能性はある。だからといって、正社員を犠牲にする改革を進める経営者の意識が問われている。

 政府は2016年12月、正社員と非正規の不合理な待遇格差をなくすため、指針案を公表している。基本給や賞与に加え、通勤手当や食事手当など具体的な待遇に関して、問題となる例とならない例を列挙している。

 指針案はあくまで非正規の待遇改善が目的だ。経済界は同一労働同一賃金の意味を、はき違えるようなことがあってはならない。

(4月17日)

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