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シリア情勢 米ロが負う重い責任

 シリアは今後、どうなるのだろう。

 内戦を収束させ、安定を取り戻すことに主眼を置いているのか。ミサイル攻撃を断行した米仏英にしても、国際法違反と批判するロシアにしても、甚だ疑わしい。

 シリアはさながら、各国の思惑が衝突する“代理戦争”の場と化している。

 米仏英軍は、化学兵器の研究施設、保管施設、司令部を標的に最新鋭を含む100発超のミサイルを撃ち込んだ。「アサド政権の化学兵器生産能力は破壊された」と作戦の成功を誇示している。

 国連安全保障理事会では、侵略行為だと批判するロシアに、化学兵器使用の抑止とシリア国民を苦境から解放するための人道的介入だ、と反論している。

 米国はシリアでの当面の目標として(1)米国の国益の脅威となる化学兵器使用の再発阻止(2)「イスラム国」(IS)の壊滅(3)アサド政権を支援するイランの活動監視―を挙げる。シリア国民保護への言及は見られない。

 トランプ米大統領はシリア復興基金への拠出凍結や、米軍の早期撤収の方針を撤回していない。米朝会談を前にした示威行動との見方がもっぱらだ。関係がギクシャクしていた欧州の同盟国と協調する機会にもなった。

 ロシアの行動も看過できない。

 シリア内戦を巡り、空爆停止や化学兵器の調査を求める安保理の決議案を、拒否権を使ってことごとくはねつけてきた。安保理を機能不全に陥らせている。

 シリア政府軍とともに反体制派を弾圧し、多くの市民を戦闘の巻き添えにしている。今回、化学兵器の使用が疑われている地域を管理下に置き、ロシアが独自に人員を派遣して証拠類を消し去ったとの証言もある。

 ロシア政府は、自ら主導する会議でシリア和平を検討しているものの、力で押さえ付けようとする限り、混在するさまざまな勢力の合意は得られまい。

 内戦が数年に及ぶシリアの損害は深刻で、自力での再建は期しがたい。鍵を握るアラブ諸国も欧米寄りか、ロシア・イラン寄りか、で見解が割れている。

 化学兵器を誰が使ったか、と問題を矮小(わいしょう)化してはならない。関係国は主導権争いから離れ、もう一度国連を中心に、シリア和平の方策を話し合うべきだ。

 シリア国民は「国際社会が守ってくれると思いたいが、信頼できない」と訴える。この声に応える米ロの責任はとりわけ重い。

(4月17日)

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