長野県のニュース

松枯れ 農薬散布割れる評価

 松枯れ対策として県内市町村が実施している農薬散布。その効果を巡って18日、二つの見解が示された。健康被害の有無も含め、農薬散布に対する県民の関心は高い。自治体などによる踏み込んだ調査と効果の検証が必要と言えそうだ。



 県が農薬散布の効果を検証するため2016年度に取りまとめた県内10カ所の調査について、植村振作・元大阪大大学院助教授(81)=環境科学=が分析し、6カ所は調査方法が不適切だったため効果の判定が不能で、残る4カ所のうち3カ所は統計学上「効果があるとは言えない」との見解を18日までにまとめた。

 県は16年度までの3年間、松本市と安曇野市、大町市、埴科郡坂城町、東筑摩郡生坂村、下伊那郡豊丘村に調査を依頼。散布区域と散布しなかった区域で枯れたアカマツの本数の推移をまとめ、県は毎年度、被害木の割合だけを公表してきた。

 植村元助教授は、県への情報公開請求や各市町村の聞き取りを行い、対象区域の地理的条件や過去の農薬散布の有無、調査対象の木や被害木の実数などのデータを入手し、16年度分について統計学的な手法で分析した。

 その結果、過去に散布が行われていた林や、一般的に被害が出やすいとされる道路沿いを調査地点に選ぶなど「比較するのが適切でない」事例が10カ所のうち6カ所に上り、植村元助教授は効果は「判定不能」とした=表。

 残る4カ所について分析した結果、散布と松枯れ防止の因果関係が認められ「効果あり」と評価したのは、無人ヘリコプターで散布した安曇野市の1カ所。有人ヘリによる生坂村と無人ヘリによる松本市穴沢、坂城町の3カ所は因果関係が認められず、「効果なし」とした。植村元助教授は取材に「散布区でも被害が少しずつ増えており、散布は中断して対策を見直すべきだ」としている。

 県は11年にまとめた「空中散布の今後のあり方」で、「現時点では、他の方法に代替えすることのできない有効な予防策」と位置付けた。ただ、16年度まで実施した調査を基に、効果の検証はしていない。県森林づくり推進課は、植村元助教授の分析について「詳しく見ていないため何も言えない」とし、「効果の見極めには、さらに広い範囲の比較など他の分析も必要。別の専門家に結果を示すことも考えたい」としている。

                         ◇

 松本市は18日、2017年7月から18年2月にかけて独自に実施した松枯れの被害状況調査の結果を公表した。市が13年度から無人ヘリコプターで農薬を散布している四賀地区の4カ所と、散布していない他の場所の衛星画像を目視で比較したところ、散布した場所の方が健全木が占める割合が多かった―とした。市耕地林務課は「薬剤散布は効果があると推測される」としている。

 調査は市が産学間の技術移転などを手掛ける信州TLO(上田市)に委託して実施した。信州大農学部(上伊那郡南箕輪村)で衛星画像を解析し、アカマツを特定して葉の変色具合から被害木を推定した。葉の変色が松くい虫によるものかは特定できないという。

 同調査によると、対象となった市東山部のアカマツ約42万本のうち被害木と推定されたものの割合は24%に上り、前年度より2ポイント増えたという。市は「調査結果を踏まえて優先して対策する場所を特定し、被害拡大を防ぐのに生かす」と説明。一方、この日公表した18年度から5年間の「市松くい虫被害対策基本方針」には、被害がわずかだったり、発生していなかったりする地域で、住民の対策協議会を設立するよう支援していく方針を盛った。

(4月19日)

長野県のニュース(4月19日)