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キューバ 新たな時代の幕は開くか

 親米の独裁政権を倒した1959年の革命から60年近くを経て、キューバに「革命後世代」の指導者が初めて誕生した。苦境にある経済を立て直し、新たな時代を切り開けるか。小国ながら存在感を示してきたこの国の先行きに関心を向けていきたい。

 最高指導機関である国家評議会の新しい議長に、ディアスカネル氏が就任した。革命を率いたフィデル・カストロ氏から弟のラウル氏へと引き継がれてきた指導体制が幕を下ろす。

 ただ、ラウル氏は共産党第1書記の地位に2021年までとどまる。社会主義国のキューバは共産党の一党支配下にあり、新政権への影響力は残る。

 ディアスカネル氏は13年に第1副議長に抜てきされ、5年後の議長退任を表明したラウル氏の後継者と目されてきた。継承は既定方針で、すぐに大きな路線の変更に結びつくことはなさそうだ。

 前途は険しい。経済は回復の道筋が見えない。石油を安く供給してきたベネズエラは混乱が続き、あてにできなくなった。国交を回復した米国との関係改善が進まないことも大きな足かせだ。

 トランプ米政権は、オバマ前政権が進めた制裁緩和を覆し、渡航制限の厳格化や商取引の規制強化を打ち出した。キューバの経済開発計画は、外国からの投資が滞り、思うように進んでいない。

 市場経済の部分的な導入がもたらした貧富の格差も深刻だ。外国人相手の飲食店などを経営して高収入を得る自営業者が増えた一方で、一般市民の収入は少なく、食料や日用品の配給制度も細って、生活は苦しい。

 キューバは革命によって米国の実質的な植民地支配から脱し、誰もが医療と教育を無料で受けられる社会を築いた。経済格差が広がる現状は、その根幹にある「公正」や「平等」という価値そのものを損ねかねない。新政権の下でも試行錯誤は続くだろう。

 政治体制の民主化も進んでいない。言論・報道の自由は制限され、新聞やテレビは全て国営だ。インターネットの接続にも制限がある。反体制派の活動家が拘束されることも少なくない。

 米国は経済封鎖を長く続け、かつては政権転覆や指導者暗殺の工作を繰り返した。それがキューバを硬く身構えさせてきた。根深い不信を解くことは、民主化や自由を後押しする力にもなる。対等で公平な関係を築き直すため、対話の回路を閉ざさず、双方が誠実に向き合うことが欠かせない。

(4月23日)

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