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南北首脳会談 非核化にどうつなげる

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅大統領が板門店の韓国側施設で会談した。2007年10月以来、10年半ぶり3回目の南北会談である。

 最大の焦点は、北朝鮮の核開発問題だった。6月上旬までに初の米朝首脳会談の開催が見込まれている。韓国にとって今回の会談は北朝鮮の非核化への意思を再確認し、トランプ米大統領に橋渡しする意味合いが強かった。

 署名した板門店宣言は「完全な非核化を通して、核のない朝鮮半島を実現するという共通目標を確認した」としている。

 これまで何度も約束をほごにされてきた。今度こそ確かな道筋を付けなくてはならない。

<融和をアピール>

 南北軍事境界線を挟んで両首脳が笑顔で握手する―。数カ月前には想像できなかった光景だ。金氏が1月の「新年の辞」で韓国・平昌冬季五輪に参加する意向を示したのを機に、首脳会談の実現へ急展開した。

 会談前、金氏が歩いて境界線を越えた後に、文氏と手をつないで北朝鮮側に戻るサプライズも演出し、融和をアピールしている。

 核実験や弾道ミサイル発射を繰り返してきた北朝鮮は「国家核戦力完成」を宣言している。核技術を向上させる中、一段と重い会談だった。過去2回は北朝鮮の首都平壌で開かれており、北朝鮮の最高指導者が韓国に足を踏み入れた点でも歴史的だ。

 「対決の歴史に終止符を打つために来た」と意欲を示す金氏に対し、文氏も「板門店は分断の象徴ではなく平和の象徴となった」と述べた。

 記念植樹の後で付近を散策する途中、2人だけでベンチに座って言葉を交わすなど会談は終始、和やかな雰囲気を印象付けた。

<具体的な行動は>

 韓国側は▽非核化▽朝鮮半島の平和体制構築▽南北関係発展―を議題に挙げていた。

 板門店宣言では、南北関係に関わる合意事項が目立つ。年内に朝鮮戦争の終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換するため米国や中国を交えた会談を推進することで合意した。

 文氏が秋に平壌を訪問することや共同連絡事務所の設置でも一致している。

 核問題を巡っては、核のない朝鮮半島を実現する目標のほか、非核化に向けた国際社会の支持と協力を得るため積極的に努力することが盛り込まれた。

 あくまで第一歩にすぎない。大事なのは、これからだ。北朝鮮の具体的な行動が鍵になる。いつまでにどう進めるのか、はっきりさせなければならない。

 今回の会談を前に、北朝鮮は核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験の中止や核実験場の廃棄を打ち出していた。ただし、核放棄は明言していない。核保有を宣言したとも受け取れるものだった。

 共同発表でも金氏は非核化に直接触れなかった。核を手放す意思はあるか。見返りを得るカードに使うのなら進展はおぼつかない。

 南北の過去2回の首脳会談では南北統一の推進や交流・経済協力の強化で合意した。一定の成果も見られたものの、北朝鮮は核・弾道ミサイル開発を続け、関係が行き詰まった経緯がある。

 交渉が停滞し、再び北朝鮮情勢が緊迫化する展開は避けなければならない。

 今後は米朝首脳会談が焦点になる。今回の南北の合意を朝鮮半島の非核化へ、どうつなげていくのか。トランプ政権の適切な対応が求められる。

 非核化の方法を巡って考え方の隔たりは大きい。北朝鮮は、米韓の「段階的な措置」が必要だとしている。一方、米側は非核化を達成するまで制裁緩和しない方針である。過去の交渉は緩和を急ぎすぎて失敗したとみているためだ。

 日韓や中国をはじめ、関係国が連携して非核化への青写真を描かなくてはならない。

<問われる日本外交>

 共同宣言を受け、安倍晋三首相は「前向きな動きと歓迎する」と記者団に表明した。南北の「過去の声明と比較、分析を行いながら今後の対応を取りたい」と述べている。

 日本にとって核・ミサイル開発と並んで気掛かりなのは、拉致問題の行方だ。

 文氏は会談で取り上げるとしていたものの、宣言や共同発表では触れられていない。首相は金氏の発言について文氏から詳しく聞き取りたい意向だ。

 北朝鮮は「解決済み」としており、容易ではない。北朝鮮の韓国向け宣伝サイトは、トランプ氏が米朝会談で日本人拉致問題を提起すると明言したことを非難する論評を掲載している。

 米韓頼みでは限界がある。首相も国会で「米韓との協力も重要だが、最終的には(自分で)解決しなければならない」と述べた。外交戦略が改めて問われる。北朝鮮との対話、交渉に向けた取り組みを強めなくてはならない。

(4月28日)

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