長野県のニュース

斜面

「グロスミッチェル」というバナナの栽培品種がある。19世紀、欧米の食卓に登場した。米国の企業は中米などの土地を借り上げ広大な農園を開発。この品種を効率良く生産し輸出できる体制を整えた。さながら「バナナ帝国」である

   ◆

種ができないため挿し木によって栽培を広げる。世界中で輸出用バナナの大半は遺伝的に同一、つまりはクローンになった。品質に当たり外れがなく、米国企業は莫大(ばくだい)な利益で潤った。だがひとたび病原体が侵入すると拡大を食い止めるすべがなかった

   ◆

土壌中の菌による「パナマ病」のまん延だ。各地で農園が壊滅し、この品種は1950年代までに姿を消した。よく似た品種の「キャベンディッシュ」に植え替えられたが、これも同様の危機にさらされている。ロブ・ダン著「世界からバナナがなくなるまえに」が鳴らす警鐘だ

   ◆

岡山市の農業法人が「寒さに強いバナナ」を開発した。グロスミッチェルの苗を一定の条件で凍らせる手法を考案した。濃厚で甘みが強く皮ごと食べられるという。研究者が40年間重ねた試行錯誤の成果だ。バナナの「多様化」に貢献できるなら心強い

   ◆

進化生物学者のロブ・ダン氏は記している。1万3千年前、私たちの祖先は1週間のうちに数百種の植物や動物を食べていた。現代の人類は植物性食物の9割をわずか15種に依存している、と。農業のグローバル化は食物の画一化をさらに推し進める。バナナはそのもろさの象徴でもある。

(4月29日)

最近の斜面