長野県のニュース

斜面

「ショーシャンクの空に」(米・1994年公開)を最も心に残る映画に挙げる人は多いだろう。主人公は銀行の元副頭取。妻と不倫相手を殺した疑いで逮捕され無実にもかかわらず終身刑を受けてショーシャンク刑務所に投獄される

   ◆

暴力、虐待、不正がはびこる過酷な環境にあっても、主人公は人間の尊厳を失わず、あきらめない。服役して20年。ようやくつかんだ真犯人の手掛かりをつぶされ、脱走計画を実行に移す。それが成功した時、主人公に降り注ぐ大雨…。印象的な場面だ

   ◆

4月24日夜、広島の尾道水道は雨だった。愛媛の刑務所施設を脱走し向島に潜んでいた平尾龍磨(たつま)容疑者は本州側に泳いで渡ったという。この夜は潮の流れも緩やかな「潮止まり」。ずぶぬれでも怪しむ人はいなかったろう。だがそうは問屋が卸さない。広島で22日ぶりに捕まった

   ◆

脱走した施設は造船所にある「塀のない刑務所」だ。選ばれた模範囚が入ることができる。受刑者同士が話し合う自治制度があり、平尾容疑者はそれをリードする「委員」だった。そのまま我慢してまじめに勤め上げれば刑期を終えることもできたのに

   ◆

先の映画で主人公と親しい受刑者が交わすこんな会話がある。「希望は誰にも奪えない」「いや希望は正気を失わせる。塀の中では禁物だ」。平尾容疑者はなぜ脱走し、逃げ続けたのか。塀はなくても閉ざされた空間だ。GPSを使った監視強化うんぬんもいいがまずは動機の解明だろう。

(5月2日)

最近の斜面