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こどもの日 自然で遊んでいますか

 「ケンケン」―。キジの鳴き声が響き渡りました。それに負けじと、甲高い歓声が山あいに飛び交います。千曲市八幡の棚田跡。ここで主に活動している認可外保育施設「ぼっこ」の10人ほどの子どもたちです。

 開園して3年目となるぼっこでは、一日の大半を屋外で過ごします。“グラウンド”には、収穫されなくなったスモモの木が何本も残され、手作りのハンモックや畑、花壇もあります。

   <人が生きていく力に>

 この日は、子どもたちが種をまいたキュウリの芽が出ていました。子どもたちは「クローバーみたい」とうれしそうです。

 水やりの最中、子どもの一人が突然、「畑マラソン!」と声を上げました。すると何人かは、あまり広くない畑の周りをグルグルと走り回ります。

 その横では、水やりでできた水たまりで泥遊びが始まりました。はだしになって泥を足に塗り付けます。ぼっこ代表の北沢美香さん(50)の脚も真っ黒です。

 ここでは遊びにルールはありません。子どもたち自身が遊びを発見して、自由に遊びます。スタッフは遊びのヒントを少し与えるだけです。

 同じような保育施設は各地に生まれています。

 長野県は自然を生かした保育や幼児教育を認定する「信州型自然保育」を実践している施設を認定して、活動費を補助しています。

 これまでに屋外の体験活動が週15時間以上の特化型が10団体、週5時間以上の普及型は142団体認定されています。ぼっこも本年度、特化型に申請する予定です。

 子どもの遊び場をつくる試みも進んでいます。

 茅野市教育委員会は、小学生や園児を野外で自由に遊ばせる「プレイパーク」を企画する団体を支援しています。

 市内の中高生でつくる「ぼくらの未来プロジェクト」が2016年3月、「禁止事項をできるだけ設けない遊び場」の設置を求める提言書を市に出したのがきっかけとなりました。

 市教委と同プロジェクトはこれまでに6回のプレイパークを開き、延べ4千人が参加しました。

 最近の幼児教育で注目されている言葉に「非認知能力」があります。協調性や自尊心、忍耐力などのことを指します。人が生きる力にもなります。

 幼児期に自然と触れ合い、自発的に遊ぶと、こうした能力が育まれるという研究があります。行政が自然の中で子どもを遊ばせることに熱心になり始めた理由です。

   <工夫して乗り越える>

 大切なのは、一人一人の親の考えです。

 幼い子どもがいれば、どう育てていけばいいのか、いつも悩んでいると思います。世の中には育児書がたくさんあって、ネットにも情報が氾濫しています。自身の親や親類など周囲の方から助言をもらうことも少なくないでしょう。

 でも、子どもたちは親が思うようには育ってくれません。どうしたらいいのか、自分の育て方が悪いのか、と苦しんでいる人もいるのではないでしょうか。

 幼児のころから英語や算数を学ばないと、小学校に入って苦労すると考える人も増えています。

 自然の中で遊ばせたいと思っても、安心で安全な部屋や施設に比べて、外には危険がいっぱいです。「けがをしたら大変」と思うのも当たり前かもしれません。

 再び「ぼっこ」の遊びの風景を紹介します。

 畑に敷いたわらから、見知らぬ大きな虫が出てきました。北沢さんが言います。「怪しいと思ったら、どうするんだっけ?」。「触らない!」と子どもたち。「毛虫に触ったら、どうなるの?」と聞かれると「ちくっとされて病院に運ばれる」と答えます。

 北沢さんは「危険を避ける装備や指導は必要」とした上で「子どもたちは危険に近づかない本能を持っている」と考えています。

 遊びは子どもたちの身体の中から沸き起こる興味や関心が基になります。どこでも、何でも、自分たちで工夫して遊び場にします。子どもは遊びの天才です。

 「自分で感じてやってみて、成功したり失敗したり。工夫して乗り越える。もし成長してから挫折することがあっても、幼児期の体験がそれを克服する基盤になる」と北沢さんは言います。

   <気持ちいいを大切に>

 もし子育てに悩んだら、家族そろって自然の中に出掛けてみてはどうでしょうか。幸いなことに、県内には身近に自然がたくさんあります。

 山に出掛けたのなら、今の時期は木陰からのぞく太陽の温かい光や緑の香り、涼しい風を感じられるでしょう。透き通った小鳥のさえずりも聞こえます。

 もし、それが「気持ちいい」と思えたのなら、ぜひ、その気持ちを大切にしてください。子どもの成長する力を信じ、見守る勇気につながるかもしれません。

(5月5日)

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