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大気汚染被害 格差の広がりは深刻だ

 胸いっぱいに吸える空気は信州の財産だ。 世界に目を広げればそれが希少価値になりつつある現実に危機感を抱かざるをえない。

 微小粒子状物質「PM2・5」などによる大気汚染の拡大である。

 世界保健機関(WHO)の発表によれば、世界人口のおよそ9割が汚染された大気の下で暮らし、健康被害のリスクにさらされている。肺がんや呼吸器疾患などで年間約700万人が死亡していると推計している。

 深刻なのは格差の広がりだ。アジアやアフリカを中心にした低・中所得国で汚染度が高い。日本など高所得国では低い。

 モンゴルの首都ウランバートルはこの冬、空が薄暗くなるほどのスモッグで覆われた。

 PM2・5の観測値が大気1立方メートル当たり1500マイクログラム近くに達した日もある。日本の環境基準値35マイクログラムの40倍以上である。

 近代化のひずみが生んだ公害でもある。遊牧民が雇用や教育の機会を求めて首都に続々と移住。人口の約4割が集中している。

 郊外に密集するゲル(移動式住居)や平屋住宅で暖房用の石炭を燃やす。それが汚染の主な発生源になっている。

 世界の30億人以上が質の良くない燃料の使用によって屋内で汚染にさらされている。大半が女性や子どもだ。2016年の大気汚染による死者のうち半数近い約380万人は屋内汚染が原因とみられる。WHOの分析である。

 深刻な大気汚染に悩んできた中国・北京はこの冬、抜けるような青空が広がった。

 政府が「青空防衛戦」と称し環境対策を徹底してきたからだ。改善の効果は出ているが、暖房の石炭使用の厳しい制限は市民を苦しめた。天然ガスへの切り替え策によって液化天然ガス(LNG)の価格が急騰した。

 強権的な対策は長続きしまい。どこかにひずみが生じる。持続的な大気汚染対策につなげるには時間がかかりそうだ。

 大気汚染は越境する。中国が発生源とみられるPM2・5は日本にも影響を広げている。

 海洋研究開発機構などの調査によれば、西日本ではPM2・5の5〜6割が中国起源だ。一方、東海甲信や関東地方では日本国内で発生したものが半分を占める。

 排ガス対策、脱炭素化、再生可能エネルギーの普及。胸いっぱい吸える空気を広げ環境格差を縮めるため、日本は自ら実践しつつ世界をけん引しなければならない。

(5月6日)

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