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阿智の住民自治 実践20年が本に

村民らが分担執筆した本を手にする編者の岡庭さん村民らが分担執筆した本を手にする編者の岡庭さん
 下伊那郡阿智村の村民による住民自治の実践が、「自治が育つ学びと協働南信州・阿智村」のタイトルで一冊になった。多様な意見を尊重する住民の主体的な学びと、それを支えて施策につなげようとする行政、議会の在り方を、村民20人余と研究者らの視点で紹介。県も「学びと自治の力」を向こう5年間の県政運営指針に掲げる中、足元の自治の可能性を考える一助に―と関係者は話す。

 村は20年前から「住民主体の行政」を掲げ、行政情報の公開・共有と学習活動の保障、予算編成への住民参加などを展開。独自の振興計画を作り村と協働する地域自治組織、村民が5人以上集まれば村政の課題研究や提案を村が支援する「村づくり委員会」などの試みがある。

 この本では、食堂・配食事業、中京圏での農産物販売、伝統行事の継承、満蒙(まんもう)開拓平和記念館のガイド、山村留学、婚活支援などに関わる住民らが執筆。地域の将来展望を顔を合わせて話し合う意義、異なる意見を根気よく調整する苦労、歴史認識を共有する難しさなどを報告している。

 これらの活動の基盤として、自由な学びを支える公民館、中央道インターチェンジ開設を巡る住民運動とその後の地域づくりといった自治の歴史も紹介。県廃棄物処理事業団(解散)の処分場計画では、賛否に分かれた住民も加わり村独自に社会環境アセスメントを行った経験が、リニア中央新幹線の残土問題でも生かされている点に触れた。

 「自治とは本来、地域で幸せに暮らし続ける上で必要なことを自ら考え、求め、共同して実現していく営み」と、編者で前村長の岡庭一雄さん(75)。近年、行政が住民を顧客のように扱ったり、「絆」「共助」などの言葉で地域を都合よく捉えたりする傾向が目につくとし、「権利としての自治を考えるきっかけにしてほしい」と話している。

 自治体研究社刊、税別1800円。

(5月8日)

長野県のニュース(5月8日)