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防災ヘリ再開 課題を慎重に詰めつつ

 昨年の墜落事故から1年2カ月を経て、県消防防災ヘリコプターの運航が再開された。

 安全対策を徹底した上で山林火災や救急搬送に活躍してほしい。

 民間航空会社との共同運航である。リース機体を使い、パイロット3人のうち2人を派遣で対応している。県は自主運航を目指しているが、自前のパイロット確保など重い課題が残る。将来にわたって安全運航を確立するため、慎重に詰めていく必要がある。

 事故を教訓に、機長席と副操縦席にパイロットが搭乗して運航状況を確認するダブルパイロット制を導入した。隊員の訓練や教育を担う安全運航管理幹を新設、第三者が参加する安全評価の仕組みも導入した。まずは、これらの取り組みを定着させたい。

 事故原因はまだ、明らかになっていない。機体の不具合は確認されていない。機長一人に負担が掛かっていたとの指摘もある。安全確保のためにダブルパイロット制を求める声は、事故で亡くなった隊員からも出ていた。

 ヘリのパイロットは近年、全国的に不足している。若手が経験を積む機会になっていた農薬散布業務の減少などが背景にあるとされ、高齢化も進んでいる。一方、ドクターヘリや防災ヘリに対する需要は高まっている。

 国も対策を考えてはいるが、即効薬はない。総務省消防庁が設けた検討会は、若手育成にも役立つダブルパイロット制の拡充を主な対応策とした。同庁は、ダブルパイロット制を目指す自治体などへの財政支援策を検討中だ。

 全国では、兵庫県と神戸市、秋田県と秋田県警がそれぞれ共同運航するなど、連携する動きも出ている。国は、パイロットの養成、確保を広域的に進める方法も検討すべきではないか。

 県防災ヘリは当面、高度な技術が求められる山岳救助は行わない方針だ。山岳救助を担う県警ヘリと連携する視点も必要となる。

 約20億円が見込まれる新機体の購入も課題だ。パイロット養成や運航団体同士の連携も見据えた十分な検討が求められる。

 航空業界では近年、パイロットだけでなく運航管理者や整備士ら全体で安全対策に取り組むCRM(クルー・リソース・マネジメント)の考え方が注目されている。日ごろから組織的に課題や解決策を探り、訓練する発想だ。

 事故当時、防災ヘリを運航する組織として県の安全意識は十分だったか。原点に立ち返って課題を見つめ直す姿勢が欠かせない。

(5月8日)

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