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プーチン氏就任 “力の外交”転換を急げ

 ロシアのプーチン氏が通算4期目の大統領に就任した。

 3月の選挙で大勝したものの、内憂外患を抱えての船出となる。

 欧米との関係は「新冷戦」と呼ばれるまで悪化している。国内では、経済の低迷と格差の広がりに国民の不満が高まっており、就任直前には大規模な反政権デモが起きている。

 “力の外交”によることなく欧米との関係を改善し、国民の生活水準を引き上げられるか。かじ取りを注視したい。

 プーチン氏は2000年の大統領選で初当選した。一時首相に転じた後、12年の選挙で大統領に返り咲いている。

 事実上、権力を掌握し続けてきたこの間、ロシア軍は08年にジョージアに侵攻。14年にはウクライナの政変に乗じてクリミア半島を編入し、翌年はシリア内戦に軍事介入している。

 冷戦後、北大西洋条約機構(NATO)は旧ソ連圏に勢力を広げている。台頭する中国も、中央アジアで影響力を強めている。ロシアには、安全保障を脅かす動きに映っているのかもしれない。

 大統領選を目前にした年次報告でプーチン氏は、最新の戦略核兵器開発に成功したと表明し、同盟国への攻撃には「核で反撃する」と警告した。鮮明な欧米との対決姿勢は、閉塞(へいそく)感も漂う国内で政権浮揚に結び付いてきた。

 強引な外交はロシアのためにもならないだろう。

 プーチン氏は「20年代半ばまでに、国民1人当たりの国内総生産(GDP)を1・5倍にする」と公約した。大統領選後は国防費削減にも言及するなど、内政重視を前面に出している。

 ウクライナ危機を巡る対ロ制裁や原油価格の下落で、ロシア経済は低迷している。貧困層も増える中、生活水準の向上は急務だ。欧米に限らず、幅広い国々との協力関係が欠かせない。

 プーチン氏も「対話の用意がある」と述べている。まずはシリア和平、英国での元ロシア情報機関員神経剤襲撃事件から、欧米との対立を解きほぐしてほしい。

 大統領の任期は6年。早くも、後継者選びが焦点と指摘する向きがある。そうではなく、さまざまな候補者が思想信条を自由に主張できる政治風土こそ、プーチン氏の言う「強く活発なロシア」を築く上で必要だ。

 ロシア極東をアジアに開放したように、多国間協調主義に基づく懐の深い外交戦略をプーチン政権に求めたい。

(5月9日)

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