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核合意離脱 先が見えぬ米国の固執

 トランプ米大統領がまた、一方的に国際協定を否定した。

 核合意から離脱し、イランに最高レベルの経済制裁を科すと宣言している。

 対外融和を掲げるロウハニ政権を追い詰めれば、イラン国内の反米強硬派を勢いづけ、かえって核開発の恐れが強まりかねない。中東の緊張も高まるだろう。

 トランプ氏は「同盟国と共に包括的な解決策を探る」としているが、その同盟国は離脱の判断を一斉に批判している。

 核合意は、秘密裏の核開発計画が発覚したイランと、国連安全保障理事会常任理事国の米英仏中ロにドイツが加わり、2015年7月に結ばれた。

 イランが大幅な核開発制限と査察受け入れに同意し、経済制裁は解除された。国際原子力機関は2月、イランが合意を順守しているとの報告書をまとめている。

 イランを敵視するトランプ氏は「欠陥だらけの合意だ」と主張する。核開発制限の期間撤廃、弾道ミサイルの制限、査察強化―を条件に、内容を見直さなければ離脱すると警告していた。

 確かに、合意によって核兵器保有の可能性が完全に絶たれる保証はない。ただ、独仏首脳が指摘したように、対話と圧力で核拡散を抑える「第一歩」の策として、国際社会の支持を得ている。

 イラン側にも頑(かたく)なな面がある。今年になって、米国に当て付けるように艦船用原子炉の製造を決めた。英独仏からの合意内容の修正提案も「再交渉の余地はない」と突っぱねている。

 イランの国内事情も影響しているのだろう。

 16年の制裁解除で、イランの原油輸出は回復し、外資進出が具体化し始めた途端、トランプ政権が発足した。萎縮した外国企業との商談は宙づりに。核合意枠外での米国の制裁発動もあって、失業率の高止まり、通貨下落、物価上昇を招いている。

 生活苦を発端に、昨年末は大規模な反政府デモが起きた。トランプ氏は「変革の時だ」と歓迎していたけれど、反米強硬派が糸を引いたとされる。

 ロシア疑惑、銃規制、ポルノ女優からの提訴…。離脱したのは、中間選挙を前に、国内の不都合な問題から国民の目をそらすためではないかと疑いたくなる。

 エルサレムをイスラエルの首都と認定した際と同様に、米国の中東政策の指針が見えない。無理やりに自国の主張を通すのでは、情勢を一層不安定にするだけだ。

(5月10日)

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