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反戦貫いた版画家・上野誠と交流 中国の版画家作品、長野へ

魯迅を描いた版画(左)など寄贈された劉さんの作品魯迅を描いた版画(左)など寄贈された劉さんの作品
 長野市出身で反戦を貫いた版画家、上野誠(1909〜80年)の作品を展示する同市の「ひとミュージアム上野誠版画館」に、上野と交流のあった中国の版画家劉〓(りゅうけん)さん(1915〜90年)の作品13点が寄贈された。館長の田島隆さん(79)=長野市=が昨年11月、上野の「幻の版画」の手掛かりを求めて北京を訪れ、劉さんの娘と交流したことがきっかけ。同館で開催中の「日中友好版画交流展」で、上野の初期作品とともに展示している。

 田島さんが探す「幻の版画」は、日中戦争が始まった1937(昭和12)年に旧満州(中国東北部)での日本軍による残虐行為を描いた作品。戦時下に反戦を主張した例のない作品で、上野は37年ごろ、仲間の紹介で劉さんと知り合い、同年の盧溝橋事件を受け急きょ帰国することになった劉さんに託したとみられる。

 田島さんは昨年、北京で劉さんの娘、王人殷さんと面会した。「父が上野さんから作品を託されたことは聞いているが、現物は見たことがない」と言われた。手掛かりは得られなかったものの、今後の交流を約束。2月に劉さんの作品を贈られた。

 寄贈された作品は、中国の作家、魯迅の肖像画「魯迅」(1958年)や、若き毛沢東を描いた「青年毛沢東」(71年)など。農作業の傍ら、たばこを一服する農家の男性を表現した「農民」(60年)は、額に刻まれたしわや男性の表情が印象深い。動植物を題材にした作品もある。

 「求めていた版画が見つからなかったのは残念だが、思いがけないご縁ができ、とてもうれしい」と田島さん。「(作品を鑑賞して)2人の友情から日中友好の思いをつないでほしい」と話している。

 版画交流展は6月3日まで。併せて、いとおしそうに幼子を抱える母を描いた「母子」(40年)、農作業の合間にやかんに口を付けて水を飲む男性の「渇」(42年)など上野の作品14点も並ぶ。月・火曜休み。問い合わせは上野誠版画館(電話026・283・2251)へ。

(〓は山ヘンに見)

(5月11日)

長野県のニュース(5月11日)