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失礼ながら、こういう人を「怪物」と呼ぶのだろう。再びマレーシアを率いるマハティール首相である。力強く演説する姿は92歳とは思えない。手塩にかけた与党と決別後、野党連合を率いて総選挙に勝利し、初の政権交代を実現した

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大の親日家で知られる。1981年、首相になって提唱した「ルックイースト政策」が象徴だ。戦後急速な産業復興を遂げた日本と韓国を国造りのモデルにしようと、欧州に目が向いていた国民に説いた。日本留学生第1号として息子も送り出している

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きっかけは開業医のころ妻と日本を訪れた体験だった。満席の飲食店で席を譲ってくれた他のお客の心遣いに感激した。薬局を営んでいた縁で案内してくれた製薬会社の社員の真面目さ、勤勉さに驚いた。戦争で知る日本人とは違う姿があった。マハティールさんの回想録にある

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22年間の首相時代は東南アジアでいち早く経済発展を成し遂げ、通貨危機では国際機関の反対に抗して強硬手段で自国を守った。その一方で国民の政治的自由を制限する強権ぶりが批判された。自らまいた種は自ら始末しなければ、という執念だろうか

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今度はかつて自分が登用した前首相を「強権的で腐敗がひどい」と批判し選挙を戦っている。それも過去に追放した元副首相とよりを戻して実現した再登板だ。常人では考えられない年齢でのトップ就任。驚くばかりの気力と知力だが、どこまで国民を引っ張っていけるか、目が離せない。

(5月12日)

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