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米朝会談へ 非核化の道筋は付くか

 史上初の米朝首脳会談が6月12日、シンガポールで開かれることになった。

 トランプ米大統領は3月、金正恩朝鮮労働党委員長に会う意思を示したものの、具体化できるのか定かでなかった。韓国の仲介により、北東アジア情勢の転換点となり得る会談の実現にこぎ着けたことを評価したい。

 焦点の非核化を巡り、米朝間の見解には隔たりがある。核放棄の措置や時期でどこまで歩み寄れるのか。会談まで水面下での折衝が続きそうだ。

 トランプ氏は「完全かつ検証可能で後戻りできない非核化」を要求し、交渉が不調なら会談をやめると警告してきた。

 米政府が念頭に置くのは、南北首脳が1992年に合意した「朝鮮半島非核化共同宣言」だ。核兵器の製造や実験を禁じ、再処理施設とウラン濃縮施設を保有しないとの内容で、まずこの履行を迫る構えでいる。

 金氏は「体制保証」を最優先に、朝鮮戦争の終戦宣言や、米国による「不可侵」の確約、制裁緩和を求めるとみられる。

 米国の圧力に対し、北朝鮮は譲歩を続けてきた。核実験の凍結を表明。米本土を狙う大陸間弾道ミサイルの発射実験の中止、核実験場の廃棄も決めている。

 4月の南北首脳会談では「完全非核化」をうたう共同宣言に署名した。先日は、ポンペオ米国務長官の訪朝に合わせ、拘束していた米国人3人を解放している。

 懸念材料もある。

 金氏は今月、中国の習近平国家主席との再会談に臨み、非核化には体制保証や制裁緩和を伴う「段階的で歩調を合わせた措置」が必要と訴えた。即時の行動を突き付ける米国をけん制している。

 過去には、北朝鮮が秘密裏に濃縮ウランでの核計画を進め、94年の「米朝枠組み合意」が破綻している。6カ国協議が05年に合意した段階的非核化も、検証の仕組みで折り合えず決裂した。

 トランプ氏はイラン核合意からの離脱を決めた。北朝鮮への警鐘との見方があるが、一方的な約束の破棄は不信を招かないか。急速に核の完全放棄を強いる手法が交渉を難しくする恐れもある。

 北朝鮮の軟化を引き出したのは米国だけの成果ではない。トランプ氏は、関係国との協調路線を堅持すべきだ。

 北朝鮮メディアは最近、日本政府への非難を強めている。米国頼みの圧力外交で拉致問題は進展するのか。再検証を求めたい。

(5月12日)

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