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日銀金融政策 正常化への道を着実に

 日本銀行が、物価上昇率2%という目標の達成時期を明示しない方針に転じた。

 5年前からの「異次元緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和策で目指して以降、6回の先送りを続けた末の判断である。3カ月に1度公表する展望リポートで時期に関する記述を削除した。大規模緩和の効果が限界に来ていることを事実上認めたと受け取れる。

 今後は、金融市場に混乱を招かないよう注意しながら、緩和スタンスをどう縮小していくかが問われる。金融政策の正常化への道を着実に進める必要がある。

 大規模緩和は、デフレ脱却を目指す安倍政権の経済政策アベノミクスのけん引役だ。日銀が国債を大量に購入するなどして出回るお金の量を増やし経済を活性化させる。目標時期の明示は、すぐにお金を使わなければ損をすると企業や個人の心理に働き掛け、消費や投資を喚起する狙いがあった。

 超低金利を進め、金融機関と日銀との取引にはマイナス金利も導入した。株価や不動産価格の押し上げにつながる投資信託の積極的な買い入れにも乗り出した。

 円安が進み、海外の好景気にもけん引され輸出企業の業績が改善した。一方、肝心の物価は2%には遠く及ばない状態が続いた。

 企業業績の向上が給料に反映されて消費が伸びれば、売り上げが伸びてさらなる業績向上を呼ぶ好循環となる。現実は、将来不安がある中で消費者の節約志向は変わらず、景気が堅調でも賃金上昇は十分ではない。金融政策が万能ではないことを示している。

 その裏で深刻化したのが、緩和策を長く続けたことに伴う金融市場や財政への副作用である。

 国債を買い続けた結果、日銀の保有比率は発行額全体の4割に達した。政府にお金がなくても日銀が買い支える「財政ファイナンス」に近い。金利が上がれば政府や日銀の負担が大きく膨らむリスクがある。超低金利は金融機関の深刻な収益悪化も招いている。

 世界経済はピークを打ったとの見方もある。貿易摩擦が激化している。来年秋には消費増税を控え、2020年の東京五輪後の落ち込みも心配だ。景気が悪化した場合、このままでは金融政策は打つ手がない状態に置かれる。

 景気が堅調に推移しているいまのうちに、金融緩和の「出口」への道筋を描く必要がある。

 米欧の中央銀行は既に正常化への歩みを進めている。少なくとも年間6兆円規模に上る株価てこ入れからは慎重に手を引くべきだ。

(5月14日)

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