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急性骨髄性白血病治療 信大発の免疫療法 細胞の効果確認

CAR−T細胞の生成装置を操作する研究チームの長谷川助教(右)と中沢教授CAR−T細胞の生成装置を操作する研究チームの長谷川助教(右)と中沢教授
 信州大医学部(松本市)の中沢洋三教授(47)の研究チームは、がん細胞を攻撃する「CAR(カー)―T細胞」を用いたがんの免疫療法の基礎研究で、主に急性骨髄性白血病(AML)への効果が認められるCAR―T細胞を開発した。マウス実験などで得た成果を米国の遺伝子細胞治療学会で17日に発表する。2020年度には患者に投与する治験を予定。早期の実用化を目指しており、抗がん剤治療や骨髄移植などが一般的だったAML治療の幅が広がる可能性がある。

 CAR―T細胞療法は、AMLと同様に「血液のがん」とされる急性リンパ性白血病を対象に、米国では実用化されている。AMLでは治療法が確立されていない。

 CAR―T細胞は、「T細胞」と呼ばれる免疫細胞の遺伝子を改変し、対象のがん細胞の表面に多く現れるタンパク質を標的として捕捉して攻撃力を高めるようにした細胞。基本的にT細胞は患者の体内から採取し、改変後に増殖させて戻す。

 中沢教授や研究チームの長谷川藍子助教によると、免疫機能が働かないようにしたマウスの体内に、人から採取したAMLのがん細胞を注入。CAR―T細胞を投与しなかったマウスは全3匹が70日以内で死んだのに対し、投与したマウスは全5匹が150日以上生存し続けた。

 AMLのがん細胞には遺伝子異常の出方によって複数のタイプがあるが、別の実験で対象とした五つのタイプ全てで5日以内にがん細胞がほぼ死滅したという。

 この療法の研究は世界的に進んでいるが、ウイルスを使って遺伝子を改変する手法が主流だ。中沢教授らは、酵素の力や電気刺激で改変する手法を開発。治療コストの大幅な削減やウイルス感染のリスク排除につながる可能性があるという。

 中沢教授は、抗がん剤に抵抗性を持つようになったがん細胞にも効果が期待できるとし、「(抗がん剤などとは)効き方のメカニズムが違い、複合的な治療で大きな効き目を得られるようになるのではないか」と話す。

 治験は、AMLが再発した難治性の患者9〜12人を対象に実施する予定。CAR―T細胞による治療を巡っては、米国で人体への重篤な副作用も報告されており、研究チームは今後、体内にあるがん細胞への有効性や安全性を見極める。早ければ5年後の実用化を目指したいという。

 【急性骨髄性白血病(AML)】 白血球や赤血球といった血液細胞のもとになる造血幹細胞に、成熟する途中で遺伝子異常が起こり、がん化する病気。国内では年間10万人当たり数人程度の割合で発症している。主な治療法には抗がん剤治療や骨髄などの造血幹細胞移植がある。日本造血細胞移植データセンターと日本造血細胞移植学会の2017年度の調査報告によると、造血幹細胞移植をしたAML患者の5年生存率は44・3%。

(5月16日)

長野県のニュース(5月16日)

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