長野県のニュース

ヘイト書き込み 根絶に取り組む契機に

 在日外国人への差別をあおるヘイトスピーチの投稿を、県がホームページの意見募集サイトに載せたままにしていた。疑問が残る対応である。

 昨年3月の投稿は、在日韓国人らを「ならず者」と呼び、寄生虫にも例える悪質な内容だった。県は、原文のまま回答とともに掲載。差別表現にあたるとの指摘を受け、先週になって、別の投稿を含む2件を閲覧できなくした。

 意見の公表にあたって県は、不適切な表現は削除修正するとサイトに明示する一方、全文の掲載を原則にしてきたという。ただ、ヘイトスピーチをそのまま載せるのでは、行政がお墨付きを与えることになりかねない。

 長野県のほかにも、内閣府の意見募集サイトや三重県のホームページに差別表現が掲載されていたことが分かっている。いずれも、指摘を受けるまでそのままだった。ヘイトスピーチが重大な人権侵害だという認識が浸透していない現状が浮かぶ。

 2016年に施行されたヘイトスピーチ対策法は「排除を扇動する不当な差別的言動は許されないことを宣言する」と明記した。国や自治体は、具体的な施策を通して解消に向けた取り組みを推し進める責務がある。

 インターネット上には、侮蔑的な主張、表現があふれている。街頭でのヘイトデモも、一時期に比べると減ったものの沈静化してはいない。ヘイトスピーチは社会に根を張りつつある。

 ヘイトスピーチは、表現の形を借りた暴力だ。敵意を向けられた人たちの尊厳を傷つけ、強い恐怖や苦痛を抱かせる。絶望感から自殺に追い込まれる人もいる。

 深刻な実態に向き合って、排外的な主張を押し返せる社会を築いていかなくてはならない。住民に身近な自治体が果たすべき役割は大きい。差別や排除を許さない姿勢を県や市町村が示し、根絶への取り組みを強めたい。

 長野県は、意見の公表について、弁護士ら第三者の助言を受ける仕組みを設ける方針を示している。表現行為への公権力の介入をできる限り避けるため、判断の透明性や公平性を確保できる仕組みにすることが欠かせない。

 サイトの運用だけでなく、これを機に排外主義の克服にどう取り組むか、明確な方向づけをすべきだ。外国人や性的少数者への差別を禁止する条例を制定した世田谷区などの動きも視野に、他の都道府県や県内市町村の背を押すような取り組みを進めてほしい。

(5月16日)

最近の社説

日付で探す

ジャンルで探す

ニュースランキング
本日のTop10(5/24 00:00更新)