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「いかのおすし」は15年前、警視庁が作った小学生の防犯教室の合言葉だ。知らない人について「行かない」、車に「乗らない」、助けてと「大声を出す」、連れていかれそうになったら「すぐ逃げる」、近くの大人に「知らせる」―

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子どもたちに覚えてほしい護身術だが、とっさの場合には恐怖で心身が固まってしまうのだろう。警視庁の研究会がまとめた過去の事件の分析によれば逃げるなどの行動に移せた被害者は中学生以上が4割。8歳以下の小学校低学年では17%にとどまる

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新潟市の小学2年大桃珠生(たまき)さんは助けを求めようにも周りに大人の姿がなかった。地域のボランティアが登下校の見守りをしているが、連れ去られた踏切付近を担当していたスタッフが高齢で引退し、最近は受け持つ人がいなかった。小林遼(はるか)容疑者はその間隙(かんげき)を突いたのだろう

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犯罪者が犯意を抱き、ふさわしいと思う対象者を見つけ、守り手が不在になる時、犯罪の機会が発生する。警視庁の研究報告は犯罪学の理論を基に、その機会を減らす「安全インフラ」を住民、企業、自治体、警察が連携して整備するよう提言している

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社会の制度設計やデザインによって犯罪の起きにくい環境を整える考え方だ。地域の見守り活動も担い手の高齢化などの課題を抱える。一方で安全を優先するあまり子どもたちの行動を過度に制約しては成長の芽を摘みかねない。足元で何ができるか共に考えつつ珠生さんの霊を慰めたい。

(5月16日)

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