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憲法の岐路 衆院審査会 議論できる環境に遠い

 衆院の憲法審査会が今国会で初めて開催された。国民民主党の結成に伴う新しい幹事を選んだだけで、実質審議は行わなかった。

 昨年秋の特別国会では3回開催したものの、その中身は会長、幹事の互選と、昨年夏に実施した欧州視察の報告書の了承だった。実質審議は1年近く行われていない。

 審議が進まない原因は安倍晋三首相と自民党がつくっている。首相は昨年の憲法記念日に改憲推進派の民間団体の集会にビデオメッセージを寄せ、9条への自衛隊明記や2020年の新憲法施行を目指す姿勢を打ち出した。野党側から「国会の立法権の侵害だ」など批判の声が上がり、その後の審議を難しくさせている。

 この国会では森友・加計や財務省幹部のセクハラ問題で自民と野党の対立が深まり、審査会を開くどころではなくなった。

 憲法は冷静で深い議論ができる環境の下、与野党の枠組みを超えて審議する必要がある。そうしてこそ国民に向け責任を持って提起できる。首相と自民党は議論の土俵を自分で壊している。

 自民は審査会に先立つ幹事会で野党に対し、改憲手続きを定めた国民投票法の改正条文案を提示した。早期の審議入りと今国会での成立を求めている。

 改正の中身は、▽投票日当日に駅や商業施設に設置できる「共通投票所」の導入▽洋上投票の対象拡大▽期日前投票の時間弾力化―など8項目。ここ数年の間に進んだ公職選挙法の改正に合わせるための見直しだ。

 与野党が賛否を戦わせるような内容ではない。本来なら協力して改正につなげるべきだ。

 ただし、自民が改正を持ちだした背景に、投票法見直しを呼び水にして野党を改憲論議に引き込む思惑が透けて見える。自民による呼び掛けを素直に受け止めるのは難しい。

 国民投票法には根本的な欠陥がある。投票の成立条件となる最低投票率の規定がないので、投票率が低い場合には一部の強力な団体の運動で改憲が決まる可能性が否定しきれない。

 運動の規制が緩く資金面の制限がない問題も重大だ。資金力のある団体がテレビCMなどを多用して世論を誘導しかねない。

 自民が投票法改正を言うのなら、こうした本質的な問題こそ議論のまな板に載せるべきだ。

(5月18日)

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